強い憧れ、成果による自信が成功を支える

2011年3月11日の東日本大震災の発生は、松山選手に大きな衝撃を与えた。当時、アマチュアゴルフ選手としてマスターズ出場権を手にしていた松山選手は、出場するか否かを迷ったという。周囲からは多くの応援や励ましの言葉が寄せられ、松山選手は出場を決意した。

松山選手にとって世界のトップの大会で勝つことは、自分を支えてくれた多くの人々への恩返しだったのだ。そのために、松山選手は思うように結果が出ない状況にも腐らず地道に練習を積み重ね、今回のマスターズ優勝を実現した。

その影響は非常に大きい。渋野日向子選手がメジャーで勝ちたいとの思いを強くするなど、松山選手の快挙は多くの人に前向きな気持ちをもたらした。松山選手以外にも、サッカー、フィギュアスケートやスノーボードなどでも若手日本人選手が世界で活躍している。彼らの活躍を見ていると、こうなりたいという意識、成果の積み上げによる自信の重要性を痛感する。

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産業発展に欠かせない“アニマル・スピリット”

わたしたちがスポーツ選手の活躍に胸躍らせるのは、日常にはない情熱や感動があるからだ。その感覚を自ら実現したいという思いを持つ人の挑戦が、さらなる満足感(付加価値)を生み出す。それは、ビジネスや経済にも当てはまる。

経済学の観点から考えた場合、一国の産業が競争力を発揮し、より多くの付加価値を生み出すためには、自己実現や成功にこだわる人々の“アニマル・スピリット”が欠かせない。アニマル・スピリットあふれる環境が、個人や組織の成長を促進し、経済全体での付加価値の創出を支える。

そうした環境の重要性を指摘したものに、米ハーバード大学のラジ・チェティ教授らの研究がある。同教授らの研究では、幼少期にイノベーションに触れる環境が、その子供の後々の成長に大きく影響するとの考察が示されている。