「CBS買収」といった夢も社内抗争で潰えてしまった
その後、ソニーの「ソフト・サービス」は大きく花開く。2002年には映画『スパイダーマン』が興行収入8億ドルの大ヒットとなり、その後も映画やゲームが立て続けにあたった。それまで同社を牽引していた「ウォークマン」や「トリニトロン・テレビ」などのハード事業も、「ソフト・サービス」事業を補完する位置づけに変わっていった。その象徴がCMOSセンサーだ。
ソニーは世界で初めてリチウムイオン電池や有機ELの開発を手掛けるなど世界の先端を走っていた。だが、これらのデバイスがコモディティー化すると、さっさと撤退。ハード事業を「勝てる領域」に絞り込んだ。そこで選んだのが高精細な画像を作成するのに必要なCMOSセンサーだ。いまやiPhoneなどにも用いられ、応用の領域は映像機器やゲームのコンテンツ制作など、ソニーの手掛ける多くの事業にも広がっている。
一方、パナソニックも91年に米映画大手のMCAを7800億円で買収。ハリウッドへの進出を試みた。当初、MCAの事業は良好だったが、ソフト化路線を進めた谷井昭雄社長が不祥事で失脚すると、「ソフト・サービス」路線から身を引いてしまう。MCAには英ヴァージン・レコードの買収や、テーマパーク「ユニバーサル・スタジオ」の建設、さらには米3大地上波放送局のCBSの買収案件もあったが、すべて却下してしまった。結局、95年には株式の8割をカナダのシーグラムに売却。メディア企業となる夢は潰えてしまう。
強みだった電池事業は、世界トップの地位を追われた
その後、パナソニックはノキアのブラウン管工場の買収やプラズマテレビへの集中投資など、ハード回帰にのめりこみ、失敗を重ねることになる。
近年の課題は電池事業だ。電池に強い三洋電機を買収。米テスラとの大型投資を試みるが、国を挙げて電池産業を育成する中国勢に世界トップの地位を追われている。
かねてパナソニックは「マネシタ電器」と揶揄されるなど、ヒットした製品が世に出ると、その資本力・販売力を生かしてライバルを駆逐するスタイルをとってきた。その戦略は高度成長期に国内市場が拡大する中では功を奏した。しかし、国内市場が縮小し、世界でも中韓勢が台頭する中で通用しなくなった。
新興する中韓勢との競合をさけるために打ち出した「ソフト・サービス」路線も、まだ成果が出ているとはいえない。ブルーヨンダーの買収が現実となり、「ソリューション・ビジネス」に乗り込んだとしても、国内では日立、欧米では米ゼネラル・エレクトリック(GE)や独シーメンスといった競合が控えている。