買収を主導したのは、“異例の出戻り役員”の樋口泰行専務か

欧州でも同じ電機大手の独シーメンスが強みだった工場の制御機器を基に、ソフト分野の企業買収を通じサービスを組み合わせて収益力を高めた。日本でも「すでに製造業ではない」(東原敏昭社長兼CEO)と言い放つ日立製作所が、独自のIoT基盤「ルマーダ」を軸に利用で稼ぐ継続課金ビジネスを手掛けている。世界の電機大手は「モノづくり」から「ソフト・サービス」の展開を急いでいる。

さらに「企業向け業務改善システム」の分野では、IBMや日立、米アクセンチュアなどコンサルティング企業のほか、最近では米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス部門「AWS」が参入するなど、競合がひしめいている。

今回の買収を主導したのは、新卒でパナソニックに入社したあと、アップルやマイクロソフトなどを渡り歩き、2017年に古巣のパナソニックの幹部として呼び戻された樋口泰行専務執行役員とみられている。樋口氏は企業向け取引を担うコネクティッドソリューションズ社を率いる立場にある。

「ソフト」をやり続けたソニーとは時価総額で大差

しかし大手証券アナリストからはこんな声があがる。

「いまだに売り上げの4割が家電を占めるパナソニックがBtoB(企業向けビジネス)をできるのか。むしろ知見のあるBtoC(個人向けビジネス)を深掘りしたほうが復活を遂げやすいのではないか」

プレイステーション3でグランツーリスモをプレーする男性の手元
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こうした見方の背景にあるのがソニーの復活だ。ソニーは今や時価総額ではパナソニックの4倍超となる14兆円と、大きく差をつけている。たが、1990年代にはハード事業に行き詰まり、パナソニックと同じく事業転換に悩んでいた。当時は、韓国・サムスン電子やLG、中国勢が台頭。日本の電機業界はハード主体のモノづくりから、ソフト・サービス路線への転換が模索されていた。

1988年、ソニーはCBSレコード(現:ソニー・ミュージックエンタテインメント=SME)を買収。さらに89年にはコロンビア・ピクチャーズ・インダストリーズ(現:ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント=SPE)を買収した。

買収後、ソニーはCBSから乗り込んできた米幹部に「食い物」にされた。幹部らはプライベートジェット機や豪邸を買いあさり、ウォルト・ディズニーに対抗して「ソニーランド」の建設案まで持ち込むなど、やりたい放題だった。95年3月期には約3000億円の赤字に転落。狼藉を働いていた米幹部を追い出し、健全な経営状態に戻ったのは90年代後半になってからだ。