コロナ禍でも純利益が前期比99.3%増

コロナ禍の影響を受けてほかのアパレルの業績が大幅マイナスの中、しまむらの2021年2月期連結業績予想(3月15日に上方修正)では、売上高が前期比3.9%増の5426億円(当初予想は5286億円)、営業利益が同65.4%増の380億円(同308億円)、純利益が同99.3%増の261億円(同192億円)だった。

なぜ、しまむらはコロナ時代の「勝ち組」となれたのか。私は5つの理由があると考えている。

1つ目は、主な販売先が郊外店であることだ。百貨店やファッションビルは長期休業で売上げを大幅に減らしたが、郊外の路面店がメインのしまむらはその影響を避けることができた。

2つ目は、日頃から使う普段着を中心に扱う点だ。外出自粛やリモートワークで消費者はファッション性より機能性を重視するようになり、比較的低価格な衣料品を多く購入するようになった。

3つ目は、本部集中のローコストオペレーション体制を基本としている点だ。すべての商品の発注が本部に集中し、在庫管理や店舗への配送まで本部一括で行われる「セントラルバイイング」によって、コストの削減およびリーズナブルな価格での販売を実現している。

しまむらでは、目利きのバイヤー約110人が世界中を飛び回ってさまざまなデザイン、素材、色彩の商品を返品なしの完全買取り方式で仕入れている。このような方式のため、仕入れ値は安く済み、販売価格も安くできる。

写真=iStock.com/Mkovalevskaya
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簡素化されたマニュアルで少人数でも店舗運営を可能に

商品を店舗に入荷してから売り切るまで、「コントローラー」と呼ばれる約80人の販売員が、商品の陳列による売場の演出や、商品動向の分析を行っている。

また、売れ行きの良くない商品を販売可能な店舗に回す店舗間移動、すなわち「移送」を行うことにより、最後の1枚まで売り切れるしまむらならではの在庫管理もこのコントローラーにより実現されている。当初計画と違って実際の売れ行きが良くない商品の売価変更、すなわち「値下」を行うこともコントローラーの権限の一つである。

この中央集権型組織において欠かせないのが簡素化されたマニュアルに基づく標準化であり、しまむらのローコストオペレーションの基盤になっている。このマニュアルを急変する環境に適したものとするために、全社員から改善提案を提出してもらい、それらを一つ一つ検討・実験し、その結果をマニュアルとして更新し続けることで、合理的な店舗運営につなげている。

マニュアルによる仕事の簡素化および標準化は、少人数でも店舗運営を可能にさせ、専門分化が追求できる。それが店長1名とパート社員6~10名程度での店舗運営の効率化につながっている。

従業員の意見が積極的に吸い上げられ、それが品ぞろえに反映されるなど、創意工夫を重視するしまむらの現場では、店舗経験が豊富なパート社員出身の女性店長も多数存在する。競合他社に比べ、少人数による店舗運営でも生活感のある、総合型「ファッションセンターしまむら」の店舗オペレーションが構築されている。