スタートアップ向けにクレジットカードサービスを提供するブレックス(Brex)社のCEOはサンフランシスコからロサンゼルスに移住したが、これはリモートワークをしながら週末はビーチに行きたい、という理由からである。これからはそういう人がますます増えていくことだろう。
人材面では世界中が需要と供給のマーケットになってきた。優秀なIT人材、AI人材は、どこに住んでいようと色々な形態で海外の企業で働ける可能性は高くなる。「自分を高く売れる」ということでもある。
「東京でなければ仕事がない」は過去のもの
企業側でもベースとなるオフィスを持たなくする動きが出ている。
ニューノーマルにおけるキャリアデザインのトリレンマからは場所が外れるだけでなく、「ライフスタイル」が優先される傾向が強まっていくものと考えられる。
日本でもすでにこうした動きは出てきている。地方に家を購入して、過ごしやすい環境の中で、その自宅から仕事をしている人などもいる。こうしたライフスタイルが珍しいものではなくなっていくのは間違いない。
「東京に住んでシリコンバレーの会社で働く」
「地方に住んで東京で働く」
こうした人たちは今後は確実に増えていくはずだ。東京でなければ仕事が見つからないといった考え方はすでに過去のものになっている。
これから日本の「東京中心主義」も変化していくものと予想される。
最近では、人材派遣大手のパソナグループが主な本社機能を東京から兵庫県の淡路島に移していくと発表したことが注目を集めた。このことにしても、コロナ禍の影響で社員の3~4割がリモートワークとなっていたのが決断の決め手になったようだ。
これからの日本で起きるマイクロシティ化
この例に限らず、企業も人も東京にこだわる理由はなくなるだろう。どこにいても情報を得られ、データは活用できるのだから、都心部と地方の情報格差は小さくなり平坦化していくはずだ。
職種を問わずリモートワークが可能になるなら、家賃が高くて、決して住みやすいとはいえない都心に暮らすより、地方あるいは環境のいい郊外などに住みたいと考える人が増えていくのは自然なことだ。
1、2時間かければ東京に出られるくらいの地域で、子供を育てるにも環境が良く、車で動けば海や山などにもすぐに出られるような場所なら理想的だ。実家や実家の近くで暮らす人が増えれば仕事と育児の両立がより実現しやすくなり、出生率が高くなる可能性もある。
東京郊外、大阪郊外などに住む人が増えるだけでなく、Uターン、Iターンを選択する人も増えていくだろう。
こうした現象を私はマイクロシティ化と呼んでいる。
企業側がフルリモートを受け入れるためにはセキュリティ管理をどうするかといった課題が出てくるが、それに伴うリスクより、それをやるメリットのほうがはるかに大きいと考えられる。