成績が下がると「塾なんかやめろ」娘を罵倒した最悪の親

Kさんは当時を振り返る。

鳥居りんこ『わが子を合格させる父親道』(学研プラス)

「私は本当に最悪の親でした。娘を煽りに煽って、成績が下がると感情的になって『塾なんかやめろ』『中学受験させない』と罵倒する最悪なループに陥りました。いつのまにか、当初掲げていた方針『6年かけて、娘をじっくりと育ててくれる学校に行かせたい』が『何が何でも難関校』にすり替わって、家族全員が苦しくなりました』

しかし、Kさんはここで考えを改めたそうだ。

「模試の結果に泣いている娘の背中はショックでした。仕事をしていても、娘の落ち込む姿が頭から離れず、悶々としていました。『中学受験に臨ませた親が悪いのだろうか……』

それで、考えたんです。娘の横に張り付くことが自分の仕事だと思い込んでいたんですが、逆だと。父親として、いい距離で応援していくべきじゃないかと」

それ以来、勉強は本人に任せ、夫婦で通学圏内の受験可能性のある学校の説明会に全て足を運び、先生方の話をじっくり聞いて回る。すると親子で「もう、ここしかないやん!」という熱望校に巡り合ったという。

「番号あったで!」娘は第一志望の学校に見事合格

「娘の成長を感じたのはその後です。自分自身で志望校対策を考えて、苦手な項目について分析して、しかも、それを正答できるようになったんです。『え? 自分だけで、しっかり考えてやれるようになったんだ?』とうれしい驚きがありました」

写真=iStock.com/AQtaro_neo
※写真はイメージです

そして、娘は第一志望の学校に見事合格した。

「合格発表の掲示板を見に行く際、私の顔がこわばっていたのを見て、娘は『もしかして緊張してる?』と元気付けてくれました。娘が先に階段を駆け上がり、掲示板を見るなり、さらりと、しかも堂々と『番号あったで!』と言った時は大きな成長を感じました」

最後にKさんはこう結んでくれた。

「娘はもしかしたら、もともと、ひとりでこの試練を乗り越える能力があったのかもしれません。それなのに、私が勝手に“受験”という縛りと圧に負けて、『きっとウチの子はダメに違いない』というマイナス思考に凝り固まったのです。

結局、私は父親としての役割を忘れ、ただ右往左往していただけでした。その反省があるので余計に、娘が自分の意思で学校を選び、そして、その目標に向かって試行錯誤しながら合格を勝ち得たことを本当にうれしく思っています。『私、この学校に通えるんだね!』という娘の言葉は忘れません」

Kさんのような父親はコロナ禍で確実に増えた。Kさんの家庭は幸い合格を手にできたが、家族の受験態勢が完全に崩壊し、子供は勉強のやる気を失い、結果も全落ちとなる残念なケースもある。

中学受験は親にとっても子にとっても試練だ。だが、子の成長を促す大きな起爆剤となりうるとともに、親にとっても親としての成長を感じるライフイベントでもある。中学受験に挑む“家族の物語”は千差万別である。その道は平たんではないが、道に迷った時は「何のために受験するのか?」という初心に戻るといい。その都度、親の本当の意味での役割を夫婦で話し合っていくことが大切なのだ。

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