女性政治家のファッションに見る自己主張
女性政治家と作業着という話でいえば、東日本大震災のときの蓮舫内閣府特命担当大臣(当時)の姿も印象的だった。民主党政権の閣僚は政府の青い作業着(防災服)で緊急対応に臨んでいたのだが、蓮舫氏はバシーッと襟を立てていたのである。これを目にした瞬間、私は「蓮舫さん、こんなダサい服を着るのがイヤだから、せめてもの抵抗をしているんだな」と思った。
小池氏も初期のころは作業着の襟を立てていたが、その立て方は蓮舫氏とは比べものにならぬほど穏やかであったし、ここしばらくの会見では襟を立てていない。この様子を見るにつけ「『作業着=真摯にコロナ対策をする現場で、都民のために汗をかく知事』という認識を国民は持つはず!」と小池氏は確信したうえであざとく着用しているのでは、とも思えてしまうのだ。
衆議院議員の稲田朋美氏は防衛大臣だったころ、たとえば米のマティス国防長官と会うときもワンピースの腰にリボンを巻くなど、ファッションに気をつかっていた。これが稲田氏へのバッシングにも繋がっていたのだが、小池氏はこの件も反面教師にしているのだろう。「無駄に“女”を売りにするのは政治家にとって無駄。とくに私ほどのポジションを獲得した人間にとっては」という真理をドカーンと突いている。
そして世間は「小池劇場」に踊らされる
これが小池氏のすごいところなのだ。「この場でのダサさよりも、長期的な私への支持の維持継続&さらなる上昇」を見越すと、一連のコロナ禍対応におけるあのダサい作業着はパーフェクトなファッションだ。
正直、小池氏の会見にしても、モニタリング会議にしても、あの作業着はいらない。震災や豪雨といった自然災害の場合は、瓦礫の山やぬかるみなど汚れやすい場所に出向く可能性もあるので作業着・防災服は必要だろう。
だが、コロナ対応であの作業着は必要なのか? 会議や会見をしてるだけだろ!
にもかかわらず、小池氏らがかたくなに作業着を着続ける理由は「危機感の演出」に他ならない。本稿で私が小池氏を話題にしている様子を見て、「なんだかんだ言って、こいつは小池の信者じゃないのか」と思った方がいるかもしれない。が、私は小池氏に対して警戒感を抱いているし、まったく支持していない。
都知事就任からすぐ、築地市場の豊洲移転について「土壌汚染対策が不安」とストップをかけ、さんざん「盛り土」問題などをアピールし、ワイドショーは「小池劇場」に乗っかった。さらに「築地は守る、豊洲は生かす」と謳いあげて、2022年をめどに築地を「食のワンダーランド」にするとも宣言した。
恐らく築地は、2022年に「食のワンダーランド」とはならないだろう。だが、すっかり「コロナはヤバい」の精神に染まってしまった東京都民は、「コロナがあったからしょうがないよね。さすがにリーダーシップのある小池さんでも、そこまで求めるのは酷だよ」とあっさり受け入れてしまうはずだ。