日本独自のプライバシー哲学を持つべき

日本は2019年G20大阪サミットにおいて「データ・フリーフロー・ウィズ・トラスト(DFFT)」を唱道してきました。ここでいう「トラスト」にはプライバシー保護が含まれると理解するべきです。プライバシー保護という基本的価値へのコミットメントによる信頼醸成があってこそ初めてデータ流通やデータを用いた革新が生まれるのです。

宮下紘『プライバシーという権利 個人情報はなぜ守られるべきか』(岩波新書)

プライバシー保護による信頼を基盤とした「デジタル立憲主義」は、GAFAを含むデジタル政策の一貫性と越境性を担保しうるのです。

拙著『プライバシーという権利 個人情報はなぜ守られるべきか』(岩波新書)において敷衍していますが、日本のプライバシー保護には良くも悪くも哲学を欠いていたため、日本の個人情報保護法は過剰な保護と過小な保護のいずれの事例もがみられました。

しかし、ビッグデータや人工知能などの新たな技術を前に、他人の私事に深く入り込まないとする日本人のエチケット精神に基づくプライバシー保護には限界があります。プライバシー保護のための信頼の構造を法制度化すること、そしてその構造に日本なりのプライバシーの思想を埋め込んでいくことが、データが氾濫するデジタル世界において求められるのです。

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