日本最難関・東大医学部からノーベル賞が1人も出ていないワケ

東大医学部(受験時は東大理科3類)は、偏差値の上では大学受験の最高峰に位置する。

数学力といい、英語力といい、かなり高い知的水準の人間を私は何人も見てきた。

しかしながら、東大医学部の卒業生からノーベル賞受賞者はいまだに出ていないし、インパクトファクターの高い論文もそんなに出ていない。ノーベル賞レベルでなくても画期的な研究や新薬の創造も本当に少ない。そして、臨床レベルに関しては、天皇陛下の手術をさせてもらえなかっただけでなく、医師である私からみてもお粗末としか言いようがない。少なくとも私がかかりたい医師は今は一人もいない(かつて一人いたが亡くなってしまった)。

どうしてこのようなことになってしまったか。

それは臨床軽視、研究重視の上、研究の方も教授に逆らうことが許されない雰囲気があり(例外的に教授と逆らってディスカッションができる医局もあるらしいが)、自由な発想が困難だから。そうした話は多くの東大医学部OBから耳にする。

ところが、官僚になった人間が次官や局長を目指すように、医局に入った人間は東大教授や、最悪でも地方の大学の教授を目指すので、長く東大の医局に残ろうとする。

写真=時事通信フォト
参院予算委員会に臨む(左から)谷脇康彦前総務審議官、吉田真人総務審議官、秋本芳徳前情報流通行政局長、湯本博信前官房審議官=2021年3月11日、国会内

そのため、臨床の腕も磨かれず、自由な発想が許されるならもう少しハイレベルの研究ができたはずの人間がそれができない。

学生時代からこの価値観が植え付けられるので、東大のほかの学部と違って起業をする人もきわめて少ない(最近は少しずつ増えてきた)。まさに組織の価値観に染まることが、賢い人の頭を悪くしていき、医師の資格を得ることによる自由も、また現在のように知的能力が高い人が得るべき高収入も放棄していると言われても仕方ないだろう。