「中国の軍事費は、世界でトップの可能性がある」
「中国の国防費 軍拡が不信の連鎖招く」との見出しを付けた3月7日付の朝日新聞の社説は、次のように書き出す。
「中国の唱える『平和発展』をどう信じろというのだろうか。これほど軍拡を続けるのは、なぜなのか。周辺国の不安と警戒が高まるのは当然である」
公表された今年の中国の軍事費は世界第2位だ。しかも国外からの装備費を含めると、世界でトップの可能性がある。各国を軍事力で脅し、ひざまずかせたいのである。軍事力だけでない。経済力を駆使し、相手国を助けるように見せかけ、中国なしではその国の運営が成り立たないようにしてしまう。巨大経済圏の一帯一路に甘んじている国々はそのうち中国の怖さを思い知るはずだ。
朝日社説は指摘する。
「李克強首相は『国家の主権、安全、発展利益の堅守のための戦略能力を高める』という。しかしもはや到底、専守防衛とはいえず、予算の内訳も不透明だ。脅威の下にあるのは中国ではなく、周辺国の側である」
「非専守防衛」「不透明な国防費」は世界に脅威を与える。裏を返せば、そこが習近平政権の狙いでもある。
朝日社説「不信の連鎖が招く軍拡競争の激化を深く憂慮する」
朝日社説は「米国防総省は昨秋の報告書で、中国海軍の艦艇数がすでに米海軍を上回ったと指摘した。人工知能やサイバー、宇宙などの新たな分野でも技術の発展は著しく、核弾頭の数も着実に増えているとされる」とも指摘し、こう解説する。
「目的は何か。習近平国家主席は4年前、今世紀半ばまでに中国軍を『世界一流の軍隊』にするとの目標を掲げた。昨秋は、建軍100年に当たる2027年までの『奮闘目標』も訴えている。いずれも、米国と均衡する軍事力を段階的にめざそうとしているとみられている」
「実際の軍の動きも危うさを増している。南シナ海では、演習や新型ミサイル実験を活発化させている。台湾への挑発的な動きも目立ち、米中の軍事的な緊張が高まりつつある」
「不信の連鎖が招く軍拡競争の激化を深く憂慮する」
軍拡競争の行きつく先は戦争である。過去の歴史を見ればよく分かる。
最後に朝日社説は「必要なのは、地域の緊張緩和に向け、軍縮や軍備管理の国際連携に主導的にかかわっていくことだ。武力を誇示するばかりの大国主義は決して尊敬されず、平和と安定も築けない」と主張するが、習近平政権が国際連携で主導的役割を果たせるとはとても思えない。残念だが、朝日社説の理想に過ぎず、絵に描いた餅だ。