中国の軍事費は日本の防衛費の4倍以上に相当
中国の国会に当たる「全人代(全国人民代表大会)」が3月5日から11日まで北京の人民大会堂で開かれた。
政府活動報告で、李克強(リー・コーチャン)首相は2021年の国内総生産(GDP)の成長率目標について「6%以上に設定したことを明らかにしたが、2025年までの新5カ年計画の成長率目標は示さなかった。
中国は「新型コロナに打ち勝った」とアピールするが、やはり現実は厳しく、パンデミック(世界的大流行)と長期化するアメリカとの対立から先行きに危機感をもっているのだろう。
それでも公表された軍事費(国防費)は過去最大規模である。前年比6.8%増の1兆3553億元(22兆5000億円)だ。伸び率は昨年(6.6%)を上回る。アメリカに次ぐ世界第2位の規模の予算で、アメリカに対抗する軍拡路線が巨額な軍事費に表れている。
ちなみに日本の2021年度予算案の防衛費は5兆3422億円。中国の軍事費は日本の防衛費の4倍以上にもなる。単独で中国と正面から戦うことは難しい。
実際の中国の軍事費は公表の数字をはるかに上回るはず
軍事費の内訳は明らかにされていない。中国の軍事費には海外から調達した高額な軍事装備品の購入費は含まれていないといわれ、実際の軍事費は公表された数字をはるかに上回るはずだ。
たとえば、上海で建造されている空母は艦載機の発艦能力を向上させるための「電磁式カタパルト」を装備しているとみられ、建造費は総額で1兆円にも上るという。
アメリカの国防総省の報道官は3月5日の記者会見で「中国が公表した軍事予算は不透明だ。全人代で巨額の軍事費を何に使っているのかを具体的に説明する必要がある」と中国政府に求めている。
習近平(シー・チンピン)政権は昨年秋の中国共産党の会議で、「軍創設100年」の2027年を中国軍の対アメリカ戦力強化に位置付け、戦闘能力を高めることを決定している。経済成長が鈍っても軍拡の路線は変えないのが、習近平国家主席の国家戦略なのである。
その戦略によって大きな貧富の格差が生まれ、下層の多くの国民の生活が犠牲になっている。周辺の国々の中国に対する脅威も増すばかりで、偶発的な衝突が有事に発展する危険性がある。