2月18日には先進7カ国(G7)オンラインサミットに合わせて英紙フィナンシャル・タイムズに「欧州とアメリカは緊急に、自分たちのワクチンの最大5%を途上国に回すべきだ」と訴えたものの、ジョー・バイデン米大統領に完全にスルーされた。自国のワクチン接種が終わらないのに他国に回す余裕がどこにあると言うのだろう。

仏バイオテクノロジー企業サノフィと英製薬大手グラクソ・スミスクラインは昨年12月、ワクチン候補の臨床試験で高齢者の免疫反応が十分に得られなかったとして供給計画を今年末に延期した。狂犬病ワクチンの開発で世界的に有名な仏パスツール研究所に至ってはコロナワクチンの開発を断念した。

フランスがワクチン開発に出遅れた理由はmRNAなど最先端テクノロジーに慎重だったことや、AZワクチンを開発したオックスフォード大学ジェンナー研究所のようにワクチンを製造できる自前の施設を持っていなかったこと、開発資金不足や臨床試験の遅れなどが挙げられる。

要するにフランスは、昨年12月中旬の時点で124億ドル(約1兆3150億円)をつぎ込んだアメリカの「ワープ・スピード作戦」や、10年かかったワクチン開発の期間を10カ月(300日)に短縮したイギリスのようなエコシステムを構築できなかったのだ。

一方、イギリスのボリス・ジョンソン首相はワクチンの開発スピードを300日から100日に短縮する大胆な計画をぶち上げている。

AZワクチンを叩くドイツ

1月25日、ドイツの大衆紙ビルトと経済紙ハンデルスブラットは「AZワクチンの65歳以上への有効性はわずか8%」と報じたが、独政府が被験者に占める56~69歳の割合の8.4%をわざと取り違えて“裏ブリーフィング”した疑いが浮上している。

独ロベルト・コッホ研究所予防接種常任委員会は65歳未満にのみ接種すべきだと勧告し、イェンス・シュパーン独保健相も「高齢者のデータは十分ではなく、承認は限定的だ」と強調した。その結果、145万回分のAZワクチンのうち接種されたのは27万回分だ(米紙ニューヨーク・タイムズ)。

AZワクチンだけを接種するベルリンのテーゲル予防接種センターでは、1日に3800人の予約が入っているのに実際に接種を受けに来るのは約200人に過ぎないと報じられている。米ファイザー製ワクチンはドイツのバイオ製薬ベンチャー、ビオンテックが共同開発していることも、ドイツのAZワクチン忌避に拍車をかけているのかもしれない。

対応を迫られたアンゲラ・メルケル独首相は「ワクチンが現在のように不足している限り、何を予防接種するかを選択することはできない」と訴えたものの、66歳であることを理由に自らはAZワクチンの接種を否定した。