「東北新社の接待」は、氷山の一角にすぎない

秋本氏は、2月15日の国会で「『東北新社』以外の放送事業者と会食したことはない」と明言したが、情報流通行政局長の前々任者である山田氏が吐露した内容とは、真逆。どちらが実態に近いかは、推して知るべしだろう。

放送事業者にしてみれば、許認可権をもつ総務省との意思疎通は最優先事項で、「総務省詣で」は必須。まして幹部との交流は、各事業者の総務省担当者にとっては手腕を問われる重要テーマだけに、さまざまな名目で会食の場が設けられていたようだ。

「東北新社」の接待は、たまたま露見しただけで、氷山の一角にすぎないことは容易に想像がつく。

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とはいえ、絶対的証拠を突きつけられない限り事実関係を認めない官僚の姿は、安倍晋三政権下の「森友・加計学園」問題と重なる。

なにしろ、今回の「違法接待」でも、総務省の調査では、懲戒処分になった官僚が自発的に名乗り出たケースは皆無で、「東北新社」から提供された接待リストを突きつけられて初めて会食の有無を認めたというのだから。

総務省ナンバー2のポストにありながら、倫理規定を全く無視

もっとも、情報交換や情報収集のためにコミュニケーションを深めることは、一概に問題があるとは言えない。むしろ、まっとうな政策を立案・遂行するためには不可欠ともいえ、奨励する向きすらある。これは、総務官僚に限らず、霞が関官僚の基本的なスタンスだろう。

だが、ややもすると、「東北新社」のような利害関係者による「違法接待」が起きかねない。

山田氏は、放送事業者との会食について「ルールにのっとって対応してきた。基本的には割り勘」と強調したが、総務省ナンバー2のポストにありながら「利害関係者と会食→常識外れの高額接待→総務省に報告せず」と倫理規定をまったく無視したのだから、山田氏の説明をそのままうのみにするわけにはいかない。

後輩たちが「接待漬け」に鈍感になるのもむべなるかな、である。

山田氏は「違法接待」を受けた理由を「心の緩み」と語ったが、今や総務省全体の心が緩み切っているのではないだろうか。