バイデン政権が期待するのは日韓との「三国連携」

そこでバイデン政権として期待する必須の北東アジア戦略は、二大民主国である日本と韓国との「三国連携」となる。日韓に対して期待される最低限の要請は「歴史問題での対立をほどほどにおさめ、民主主義同盟国として不安なく機能すること」である。

このバイデン大統領の動きを察知した韓国の文在寅大統領は素早い動きを見せた。1月18日の記者会見で、「原告同意」という条件は付けつつも、少なくとも一度も正式に発言したことのないことを3点述べたのである。

・韓日間には解決しなければならない懸案がたくさんあります。(その解決のために)努力をする中、慰安婦判決問題が加わって率直に少し困惑しているのが事実です。
・2015年度に両国政府間に慰安婦問題に対する合意がありました。韓国政府はその合意が両国政府間の公式的合意だったという事実を認めます。
・強制徴用問題も同様です。強制執行の方式で現金化されるとか、判決が実現される方式は、韓日両国の関係において望ましいとは思いません。

日本の国益のための外交力強化のポイントは韓国とロシア

筆者はこのわずかな「機会の窓」を迅速に開くべく日本外交は賢く静かに動いていただきたいと考える。徴用工問題は民間訴訟であるという特性に鑑み、当事者和解に向けての知恵をしぼれないか。慰安婦問題については2015年協定を実質的に再興し、対話による合意の途に戻れないか。

何よりも北東アジアにおける日本の国益から考えていただきたいと思う。バイデン大統領にはバイデン大統領の考えるアメリカの国益がある。しかし、日本には日本の国益があり、両者は完全には一致しない。日本にとってアメリカは必須の同盟国である。同時に、中国もまた重要な隣国である。両国との共存は日本の生存と発展のために欠かすことができない。

そういう日本外交の基盤に立つなら、その第一の課題は、対米・対中外交についての最適解を間違えないことにある。そして第二の課題は、北東アジアにおける提携国を増やすことにある。それが日本の外交力をつける。その候補国は今、筆者の見るところ、二カ国しかない。韓国とロシアである。従って日韓関係の正常化は、日本外交の戦略的な利益である。