「モイスケア」と呼ばれる化学繊維は皮膚トラブルが少ない

「静電気は繊維と繊維の摩擦によって生じます」と潮田教授が言う。

「一般的には天然繊維よりも化学繊維で作られたもののほうが、静電気が起きやすい。特に、冬にナイロンのタイツをはいているときに、ポリエステルやアクリルが含まれた服を着ているとバチバチッとなりやすいですね」

天然素材の綿の肌着が主流だった頃には肌荒れに悩む人が少なかった。それはやはり静電気が起きにくく、肌にもやさしかったわけだが、綿100%の生地も、前述したようにダボつき感や濡れると乾きにくいというデメリットがある。それを補う形で化学繊維が入ったものを選ぶのも一案だ。

近年の一般的な発熱効果をうたう肌着は「レーヨン」を使用しているケースが多い。レーヨンは天然原料を溶かして作った再生繊維と呼ばれるもので、再び図をみるとこれも公定水分率が11%と、絹と変わらない吸湿機能がある。

図にはないが、潮田教授によると、「モイスケア」と呼ばれる化学繊維は41%の水分率とされ、全繊維の中でトップ。アクリルに吸湿性を付加したもので、一般的な発熱肌着と比べると割高だが、皮膚トラブルが少ない。とにかく暖かいものがほしいなら、品質表示タグにモイスケアと表記されたものを選ぶといいだろう。

敏感肌でも安心、暖かい服の選び方

一方で化学繊維の混入率が多くなってしまうと、“皮膚との相性”によってはかぶれることもあるかもしれない。また、過度に暖かい機能を持った肌着は、体に必要な水分や湿気まで吸い取ってしまうことがあり、その結果かゆみが起こる可能性がある。

“衣服気候”という言葉がある。体(胸)と衣服の間の気候を指し、ここが人の皮膚温33.6度よりやや低い「温度32度前後、湿度50%前後」だと衣服を着用して快適といわれる。この状態から遠ざかるにつれて不快感が広がり、温度が34度、湿度が80%以上になると発汗を招く。

体が快適と感じる範囲は意外に狭い。個々の代謝によっても感じ方は異なるので、自分がどの肌着なら着心地がよく、日常生活で寒さや暑さを感じにくいか、いろいろ試してみよう。

最近は縫い目が肌に当たらないような縫い方や、品質表示タグをはずして生地にプリントするなどの工夫を施した、肌に優しい肌着も登場している。