化学繊維は、吸湿発熱性がぐんと低くなる

それに対して、ポリエステル、ナイロン、アクリルなどの化学繊維は、吸湿発熱性がぐんと低くなる。

「あったかく着るためには生地が分厚くて、その中にたくさん空気を含むことができるといい」と、潮田教授。

絹や麻など天然素材の吸湿発熱効果は高いが、着たときに冷たさを感じる“接触冷感”がある。またウールは時々太い羊の毛が混じるため、チクチク感じる人もいます。触感を確認したい。

「ですから綿のような素材がいいと思うのですが、ただそうすると“ババシャツ”という言葉に代表されるように、ダボッとしていて太って見え、かっこう悪い。近年は、空気以外の保温性の仕かけとして人工的に吸湿発熱の機能を付加したり、少し効果は落ちますが化学繊維の吸湿発熱効果によって暖かさを出しています。ヒートテックは皮膚にフィットとしている点でも暖かさを感じる面もあるかもしれません」(同)

潮田教授によると、皮膚と服の間が「1~2ミリ程度のゆるみ」におさえられるのが最も暖かいという。それ以上隙間があると、熱が逃げてしまうのだ。

「かゆみ」の原因は、肌着と皮膚の摩擦にある

しかし「フィット感」は、一歩間違えると肌に悪影響を与えやすいことも覚えておこう。インターネットで「ヒートテック」と打ち込むと、「かゆい」という検索ワードが出てくるほど、発熱肌着を着用することで皮膚の状態に悩む人が多い。1つには肌着と皮膚の“摩擦”が原因という。

池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長の藤本智子医師がこう話す。

「頻繁にダンボールを持ち運びするような職業の人は指の皮脂が奪われて、指紋の部分がカサカサになりますね。体も同じで、適切な隙間がなく、ぴったりした服で動いていると、皮脂がとれてより乾燥が深まってしまいます。洋服と皮膚の間に少しだけ空間があるようなもの、摩擦を起こさず、それでいて空間の熱を逃がさないような素材がいいと思います」

服を脱ぐときに起きる静電気も、摩擦の一種。もちろん静電気が起きない服のほうが皮膚にはいい。