孤立したイギリスの活路はどこにあるのか

EUを離れたイギリスは今後、どのような道を歩むのでしょうか。

茂木誠『世界の今を読み解く「政治思想マトリックス」』(PHP研究所)

キャメロン政権は一時期、EUに代わる巨大市場として中国に期待を寄せ、すり寄ろうとしました。習近平を国賓として招き、バッキンガム宮殿に泊まらせたほどです。しかし、今後ますます悪化していく米中関係を考慮すると、中国に肩入れしてアメリカに睨まれるのは得策ではありません。

イギリスが生き残る道は、アメリカとの自由貿易協定で北米市場と結びつくこと。もう一つは日本主導のTPPへ加盟し、環太平洋地域に市場を求めることです。

ただ、ヨーロッパの国であるイギリスがTPPに参加できるのか? まったく問題ありません。南太平洋にピトケアン諸島という海外領土を持つイギリスは、「太平洋沿岸国」であり、TPP加盟が可能なのです。

また、中国封じ込めを目的とした日・米・豪・印の軍事協力体制にイギリスが加われば、これは21世紀の日英同盟であり、太平洋版のNATOが誕生する可能性もあります。

すでにイギリス軍と自衛隊の共同訓練も始まっています。米・英・カナダ・豪州・ニュージーランドの英語圏5カ国が機密情報を共有する「ファイブ・アイズ」という組織がありますが、2020年に河野太郎防衛大臣(当時)に対し、イギリスの防衛大臣が「ファイブ・アイズへの日本の参加を歓迎する」と呼びかけています。日本にとっても、日米同盟に代わる多国間での安全保障パートナーシップを構築することは望ましいのです。

世界は、EU(ドイツ)・中国のユーラシア大陸枢軸陣営と、米・日・英・インドなどの海洋国家陣営とに分かれつつある。私には、そう見えます。

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