コロナ禍の選挙は投票率が「高い」

地方選で想定外の展開は、なぜ起きているのか。コロナ禍と無関係ではない。

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昨年春、新型コロナウイルス感染の第1波の頃、コロナ禍の地方選の見通しについて「自民系現職が圧倒的に有利」との見方が支配的だった。

報道はコロナ報道ばかりで選挙報道は脇に追いやられる。

街頭など聴衆に訴える運動は難しくなる。感染を恐れる有権者は投票に行くのを控え、投票率は下がる。

その結果、自民党など強固な組織に囲まれた候補が圧倒的に有利になる――。こういう姿を政治のプロたちは予測していた。ところが、実際は違った。

確かにマスコミの選挙報道は従来よりも抑制的になり、選挙戦も「密」を避けるものとなった。そこまでは予想通りだ。

しかし、投票率は下がっていない。岐阜県知事選の投票率は4年前より11.65ポイントも高い48.04%。山形は、前回選挙をわずかに下回ったが62.57%と高率だった。富山では25.33ポイントも高い60.67%。それぞれ地域事情はあるものの、投票率は十分高い。

SNS中心の選挙で、若者が関心を持ち始めた

この現象はなぜ起こったのか。地方の選挙担当者や取材にあたったジャーナリストの話を総合すると、こうなる。

コロナ禍は、国民1人1人の命を蝕む恐れのある未曾有の事態だ。そこで自分たちの自治体や、国のリーダーがどういう対応をしているか、国民はいつになく関心を持つようになった。

選挙戦でも、候補者の訴えに耳を傾けるようになる。

現職首長がとった対応に不満があれば、批判票を突きつける。

候補者が、インターネット,SNSを通じた選挙運動に軸足を置いたことで、これまで選挙に関わりの少なかった若者が選挙に関心を持つようになったことを理由にあげる有識者もいる。

コロナ禍で「組織選挙が有利になる」はずが、「組織されない浮動票が掘り起こされた」と言い換えてもいい。だとすれば、自民党が思わぬ苦戦を繰り返すのも合点がいく。