尊敬できない店長になっていると気づいた部下の一言

かつて働いていたのはユニクロだった。もともと接客業に興味があったという小島さんがユニクロを選んだ理由は、若くして店長に登用されること。2008年の入社時には600人ほどが採用され、急成長する中で大量に店長が育成されていた。

「自分も成長して、大きな店舗で働きたい」と意欲に燃えて、2年目には店長になる夢が叶った。配属先の大阪で店舗を任され、異動の度に部下も20人、30人と増えていく。だが、20代半ばでの管理職は荷が重く、自分の未熟さを思い知らされる。あるとき、部下の一人から、「自分たちのことをちゃんと考えてくれていますか?」と聞かれ、ハッと気づくことがあったという。

「私の中には売り上げの成果を出すという視点しかなくて、部下にも同じ目線で働くことを押し付けてしまうところがあったんです。目標を達成するためには会社の価値観がすべて正しいと思い込み、やるべきことをできていないと、『何でできないんですか』とバッサリひと言。相手の立場からすると何か理由があったにもかかわらず、それを汲み取ってあげられなかったのです。部下は何で自分を理解してくれないのかと思い、尊敬できない店長のもとで働くことが苦痛になってしまう。それでは良いチームを作れなくて、仕事の成果も出ないという悪循環で……」

人によって仕事に求めるものや価値観は違い、子育てなど家庭の事情を抱えながら働く人たちもいる。それぞれの状況を理解することが管理職には大切だということを学んだ。

店長として失敗や挫折の痛みも次々経験するなかで、小島さんは新たな環境に飛び込んでみようと思う。入社4年目、社内公募で参加したのが人道支援活動だった。

「実際には喜ばれていなかった」現地で知った配布の実情と生の声

ユニクロでは発展途上国の難民のために、不要になった衣料を回収し、リサイクルして届ける活動を行っていた。小島さんは同年代の同僚と二人でUNCHR(国連難民高等弁務官事務所)の研修を受け、バングラディシュへ。現地ではNPOが配布していたので、難民の人たちが満足しているのかということを確認し、レポートすることが主なミッションだ。そこでも生の声を聞くことの重要性を感じた。

(写真提供=本人)

「実際には全然喜ばれていなかったんです。『穴が開いているものも届いています』という話を聞いたり、届いた順に配布されるのでサイズや季節も合わない服だったりするのだと。ユニクロは質の高い服を作っていたのでそのもの自体は悪いものではないとわかるけれど、それを最適に配布されていないことが問題だとわかり、NPOの方々とやりかたを見直しました」

現地で出会う人たちからいろいろ刺激も受けた。UNHCRで働く職員たちは厳しい仕事に追われながらも、プライベートの生活を大切にすることでバランスを取っている。さらに困難な状況にある難民の生活を知るほどに、「生きる」とはどういうことなのかとも深く考えさせられた。