たびたびの炎上もダメージにはなっていなかったが…
一方で、「いちサラリーマンがトップの言動を心配したってしょうがないだろ」と開き直る広報マンもいるだろう。そういうスタイルの代表格がDHC広報だ。吉田会長の文章についてハフポスト日本版が取材を申し込んだところ、「ご依頼いただいた取材の件に関しまして、回答することは特にございません」と塩対応をした。
なぜこんなにひとごとなのかというと、絶対権力者の言動に対してコメントなどできるわけがないということに加えて、これまで大きな「実害」がなかったということも大きい。
実はDHCは子会社が運営しているネット番組などでもたびたび在日朝鮮人への差別的な発言がみられ、そのたびにネットで批判を集め、不買運動が起きている。しかし、それらは大幅な売上減などにはつながらず、大きなダメージにはなっていない。
こう聞くと、「なんだ、じゃあいざとなれば無視すりゃいいってことか」と思うかもしれない。しかし、危機管理広報というのは、その時の世間のムードもあれば、当の企業のブランドイメージやこれまで積み重ねてきた信頼などによってまったく結果が違ってくる。
ワンマン社長の舌禍は内部告発の背中を押す
しかも、ワンマン経営者の「舌禍」というのは短期的な売上減といった直接的なダメージは大きくなくとも、それをきっかけにしてボディブローのようにじわじわと実害をもたらすケースも多い。代表的なパターンは以下の3つだ。
1.社員から内部告発が活性化する
2.「独裁」「もの申せないムード」に注目が集まる
3.ほかの不正やモラルを逸脱した行為がないか探られる
1に関しては、すでに文春オンラインで「DHC現役社員が告発」というキャンペーンが始まっている、ほかには、少し前の日本郵政のケースもわかりやすいだろう。
2019年3月の西日本新聞のスクープで、かんぽ不正が明らかになった後、経営陣が会見で終始責任逃れをした揚げ句、「問題は現場で起きている」などと「舌禍」とも取れる発言をした。これで現場の不満が爆発、全国の郵便局から相次いで不正の内部告発が寄せられたのは、記憶に新しいことだろう。
このようにワンマン社長の「舌禍」というのは、会社に不満を募らせる社員たちの内部告発の背中を押すことになるのだ。