ネガティブなイメージが徐々に定着していく

実はこのあたりが、ワンマン経営者の「舌禍」の本当に恐ろしいところである。

トップの問題発言や不謹慎発言自体は、批判を受けても時がたてば忘れ去られる。謝罪をして鎮火する場合もあるし、企業としてもそこまで深刻なダメージはない。しかし、怖いのは「その後」だ。「舌禍」を呼び水にして、内部告発やメディアのキャンペーン報道が活性化して、「あれくらいの発言はするのだから、裏ではもっとひどいことをやっているのでは」とネガティブなイメージが徐々に定着していってしまう恐れがあるのだ。

では、このような事態を避けるにはどうするかというと、ワンマン経営者に自分の発言の重みをご理解いただくしかない。そんなことを言ったらクビだという人の場合は、筆者のような外部の人間を利用する手もある。

約13年間、300件近く経営者のメディアトレーニングや広報アドバイスをしてきたが、その中でかなりの割合で、「自分たちが言っても聞いてくれないので、代わりに注意をしてください」と広報担当者から頼まれることがある。部下に指摘されるより、外部のほうがまだ耳を傾けるというわけだ。

“標的”にされてしまったらどうすればいいか

さて、ここまでは「舌禍」をする側について説明してきたが、最後に「舌禍」の標的になった側についても触れておきたい。今回で言えば、吉田会長に名指しで攻撃をされたサントリーのような立場になった際にはどうすればいいのか。

結論から先に言ってしまうと、「何も言わない」が正解だ。今回、サントリーは、J-CASTニュースの取材に対し「他社様のホームページに書かれていることについて、弊社からコメントすることは差し控えさせていただきます」と回答した。このサントリーの対応は間違っていない。

ただ、ひとつだけ蛇足だったのではないかと感じる対応があった。このコメントには以下のような続きがあるのだ。

「サントリーは人権方針を定めており、基本的な考え方として、社会の一員として、人権尊重の重要性を認識しております」