日本人同士で結婚した夫婦に対する差別ではないか

選択的夫婦別姓を認めないというのは、実は「日本人同士で結婚した夫婦」に対する差別だという見方もできます。というのも、日本では日本人同士が結婚した場合、夫婦別姓は認められていませんが、日本人が外国人と結婚した場合には夫婦別姓が認められているからです。外国人男性と結婚した日本人女性は、夫の外国の苗字にすることもできれば、結婚後も旧姓のままにし、別姓にすることが法律で認められています。

この矛盾点については多くの専門家が指摘しています。夫婦別姓訴訟の原告側の弁護人であった野口敏彦弁護士は2019年11月13日に行われた日本外国特派員協会の記者会見で、国際結婚をした夫婦に夫婦別姓が認められている理由について「天皇がトップで、その下に家があって、男性が戸主という『日本人なら家制度で管理されて当たり前』だという考えが日本に根付いている。外国人は家制度の一員だとはみなされていないため、別姓が認められているのではないか」と話しました。

現代に照らし合わせて家族というものを考えたとき、「外国人と結婚する人には認められている権利が、日本人と結婚する人には認められていない」というのはおかしな話だと思いませんか。

ドイツでは同じ苗字を名乗りたい場合にのみ苗字を変える

筆者の出身のドイツでも法律が変わったのは「ごく最近」です。2012年までは結婚後に何も手続きをしなければ妻は自動的に夫の苗字になり、旧姓を諦めなければなりませんでした。

夫が妻の苗字を名乗りたい場合、結婚前に役所で妻側の苗字を名乗りたい理由を述べた上で申請をしなければいけませんでした。これは男女平等だといえる制度ではありませんでした。

しかしドイツでは民法が改正され、2013年からは「結婚」というものが人の苗字に影響を及ばさなくなりました。現在は基本的には双方が独身の頃の苗字を名乗り続け(夫婦別姓)、「夫婦が同じ苗字を名乗りたい場合にのみ、どちらの苗字にするか選択をする」形となっているのです。尚、これは男女に限らず同性の夫婦に関しても同じです。

夫婦別姓である場合、親は子供が生まれてから一カ月以内に「子供が両親のどちらの苗字を名乗るのか」を決めなくてはなりません。きょうだいで別々の苗字を名乗ることは認められていないため、一番最初に生まれてきた子の苗字と同じ苗字を妹や弟も名乗ることになります。