「搾りかすの役員報酬を会社に貸す」無駄

さらに、役員報酬を出してはいるものの、会社のお金が足りなくなり、役員が会社に貸し付けていることは、多くの中小企業で当たり前のように行われています。さんざん税金や社会保険料を取られた残りかすのような役員報酬を、そのお金の出所である会社に戻しているわけです。

その貸付は、最初から役員報酬として支払っていなければ、行わなくて良いものだったかもしれません。

「役員報酬でもらって会社に貸す」が税率の面で得だったのは、2012年までです。今は得ではありません。それならば、会社に貸さなくてよいように、会社のお金をもっと多くしたほうが良いと言えます。

役員報酬にしなければ、引かれる税金も少ないので、有効活用できる分は増えます。

役員報酬にするより法人税を払おう

節税の大きな目的は「支払う法人税の額を減らす」ことです。そのために役員報酬にしたり、保険に入ったりといったことを考え、行動に移す経営者が多いのですが、私は「法人税はしっかり払っておいたほうがいいですよ」とお伝えしています。

その理由は、先述のように税率の面でも法人税がメリットが大きいことに加えて、銀行からお金を借りにくくなることです。

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私が再三無意味と申し上げている、役員報酬を払うなどの節税は、要は「税金を払う代わりに無駄にお金を使うこと」であり、現金が減ると会社の資金繰りを圧迫します。

銀行は「十分に現金を持っていて、貸したら必ず利子をつけて返してくれる会社」に融資をしたいと考えています。

キャッシュを持っている会社に対しては、低金利などのよい条件を出してもらえるようになります。

借入総額の1%程度の法人税を払うぐらいの利益を出す

5000万円の借入があるならば、50万円法人税を払います。

銀行は「融資額=最終利益の10~20倍」というように、利益を融資額判断の一要素と考えています。そのため、法人税額が多いと、融資の枠も増えます。

借りる金額や条件にもよりますが、法人税を50万円払うことで、金利を下げることができ、結果的に50万円以上返済額を減らすことも可能になります。その50万円は投資です。

逆に言えば、この1%を超える法人税を払うことは意味がなく、利益の出しすぎと言えるので、会社の成長を見ながら過剰な利益は投資に回す、時期以降に繰り延べるといった形でコントロールします。

するべきは「会社を発展させる、大きくする節税」

役員報酬を払うなどの節税は、いわば「小さな節税」どれも会社の成長を止める、マイナスなものです。行うべきは「会社を発展させる、大きくする節税」であり、これは「大きな節税」です。

「利益における法人税の割合が、借入総額の1%程度」が理想であり、それを超えると利益の出しすぎです。過剰な利益はどのように処理するのがよいか? 投資に回すのが良いと考えます。