それぞれの思春期は?
【能町】それが第一の悩みではなくなるということですね。トミヤマさんの思春期はどんな感じでしたか?
【トミヤマ】私は諦めが早かったですね。横浜育ちなんですけど、当時はギャル文化全盛期で、ハイビスカスの造花を頭につけてルーズソックスを履いてエスプリのトートバッグを持って渋谷のセンター街に行くのが、いちばんイケてるひとたち。自分はそっち側の人間じゃねぇ、ってわかった瞬間に、顔の具が所定の位置についてたらもういいや、みたいな気持ちになって(笑)。
【能町】そういう話を聞くと「都会だな」と思いますね(笑)。私は茨城だったので、東京は近いけど日頃から行く感じはないし、みんなオシャレ感度自体がすごく低かった。そういう意味で容姿について切実な悩みはなかったので、平和だったのかもしれないです。高校生にもなると、そういうことでいじめられてる子もいなかったし。
【トミヤマ】他人から容姿をジャッジされるかされないか、というのは環境によってかなり違いますよね。大学で教えていても、まわりからジャッジされまくって大学生になった子と、ジャッジされずのびのび育ったんだろうなという子では、明らかに様子が違います。
「少女マンガってこんなにも多様なんだよ!」と伝えたい
【能町】でも、だからといってブサイク女子マンガに共感できないかというと、そんなことは全然ないんです。自分より格上な感じのひとに話しかけるときの自分のキョドリ方とか、ちょっと何かあると嫌われたんじゃないかとか、自分がコンプレックスを持ってひとと接するときの「あるある」がすごく描かれるので、それはすごくわかります。そこでがんばって無理めなひとと恋愛してみよう、みたいな気持ちは一切なかったですけど(笑)。
【トミヤマ】本当に、コンプレックスが全くないまま大人になるって難しいですよね。誰しも生きていると「人生ままならねぇな」っていうことはあるから、誰にとってもブサイク女子マンガはおもしろいし、救いにもなるだろうと思います。
それから、美男美女によるキラキラした恋物語に乗れないひとたちにも、この本を通して「少女マンガってこんなにも多様なんだよ!」って伝えられたらなと。今回掲載を見送った作品もありますし、私の知らない作品だってまだまだあると思うので、読者の方からの「あれが載ってないじゃないか」というツッコミは真摯に受け止めつつ、みんなでブサイク女子マンガについて考え続けていくような流れが作れたらうれしいですね。