反省した「圏外ちゃん」というキャラ
【トミヤマ】その感じ、わかります。ここ10年くらいで一気に変わりましたよね。
【能町】その空気のなかで、私はカウンターとして「モテない系」と自虐しつつ、「こういう女の子の層ってじつはたくさんいるよね」という話を描いたんです。でも、自分で「モテない」って言っちゃうことで自虐が強くなりすぎると嫌だなと思って、当て馬として「圏外ちゃん」というキャラを作ったんですよ。その子は一切モテないし、それを全く気にしてなくて、ファッションもなにも気にしないという、まったく男のひとの視野に入らない感じの女のひとを描いたんです。でも、それに関して私は今けっこう反省しているんです。
【トミヤマ】そういう子を登場させたことを?
【能町】いや、その「圏外ちゃん」のバックヤードを何も考えていなかったことに。
【トミヤマ】なるほど!
【能町】「モテない系」をフィーチャーするためだけに当て馬として用意してしまったので、その子にもそうなるに至った何かがあるということを捨象しちゃって、少年マンガのブスキャラくらいの軽さで描いてしまった。だから、十数年経って考え方が変わることもあるなと思いました。その経験もあって、やっぱりモブキャラというものは極力作りたくないなとどんどん思うようになりましたね。
ブサイクさを丁寧に腑分けできるかどうか
【トミヤマ】長く活動されていると、アップデートというか、気づきがあるものなんですね。昔は「圏外ちゃん」くらいはいいだろうと思っていたのに、自分への要求が高くなるにつれ、許せなくなっていく。でも、要求が高くなる分だけ優しい世界になっていくということだと思うんですよ。
「ブサイク女子」というカテゴライズって残酷ですけど、それをマンガで丁寧に描いていくことは、ある種の優しさだと私は思っているんです。使い捨てのキャラとして描いて終わりではなくて、ブサイクさを丁寧に腑分けしていくことで、キャラを「個」として描くことになると思うので……マンガ家の先生は実際に自分の手で描かないといけないですから、キャラのことを考えてないと描けないでしょうし、それはやっぱり優しさであり愛だろうと。
【能町】確かにそれはそうですね。
【トミヤマ】ブサイク女子マンガを読んでいて嫌な気持ちにならないのは、根底に愛があるからなんじゃないかと思います。