「未婚のプロ」が語る言葉

ジェーン・スーという名前を聞いて、「誰、その外国人?」と思うかもしれない。れっきとした東京生まれの日本人だ。47歳の未婚女性で、ラジオのパーソナリティーやコラムニスト、作詞家として活動している。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のメインパーソナリティーとして人気なので、一度は彼女の声を聞いたことがあるかもしれない。

語り口は、サバサバ、ズバズバ。リスナーからの人生相談に、時にやさしく、時に厳しく、人情味あふれる回答を返す。人間の弱みや各世代の悩み、「こういうの面倒くさいよね~」という生活の切り取りを、冷静に分析しつつ寄り添う。

私は、スーさんに過去に2回インタビューをしたことがある。最初にお会いしたのは2013年。彼女は当時、『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』(ポプラ社)という本を上梓じょうしした頃で、「未婚のプロ」と帯にでかでかと書かれていた。一方の私は、独身女性向けサイトの編集長をやっていた。扱う情報は、恋愛、ライフスタイルなど。特に、結婚願望の強い女性から支持を得ていた。

当時は「結婚しなくてもいい」という新しい価値観が産声を上げた頃。今ほど受け入れられていなかったように思う。スーさんは私よりちょうど10歳上だ。今より「結婚しない女性」への風当たりは強かったのではと推測する。そんな彼女が語っていた言葉をいくつか紹介したい。

結婚願望の強い女性が抱える「矛盾」

結婚願望の強いアラサー女性で、長期間付き合っている彼氏がいるとする。そんな女性が抱える悩みの一つに「彼がプロポーズしてくれない」がある。

「どうしてプロポーズしてくれないの?」と彼に聞けたら楽なのに。真意を聞けずに、女性は苦しみ抜く。そして、勝手な解釈が始まる。「彼って、きっと変わってる人なんだ!」「過去にトラウマを抱えているに違いない」。そんな考えから、プロポーズされない不満を無理やり昇華させる。「あるある」と心の中でつぶやいた女性は多くいるだろう。何を隠そう、私もその一人だった(気がする)。

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この種の独身女性は、「彼が心を開かない。でも、私が彼を変えてあげる。幸せにしてあげる」と女神的な自分に酔いしれるものである。しかしその裏で「彼にプロポーズされないなんて、自分に価値はないのでは」という大きな恐怖も抱えている。

この悩みについて、スーさんはどう答えたか。こう言うのである。

「矛盾している」

いったいどういうことなのか。ゆっくりした言葉でスーさんは説明した。

「『私があなたを変えてあげる』は彼の優位に立った上から目線で、彼をちょっと下に見ている。一方で、『プロポーズされたい』と彼にすがりついている。つまり、下手に出ている」

(ちょっと何言ってるか分からない……)。不幸にも、当時の私は、こんな残念な状態だった。しかし、成長と共に、この説明の意味がわかるようになった。私は彼をコントロールしたかった、できると思っていた。しかし、コントロールできない自分への絶望感・無力感からくる自己否定。その結果、コントロールできない人間を傷つける。結婚願望が強すぎる女性は、このスパイラルに気を付けていただきたい。

実に不健康な人間関係であった。あの頃の彼には、「幼稚な自分が迷惑をかけました」と菓子折りを持っていきたい気分である。