40代男性の結婚を阻むのは
「晩婚化が進んでいる」とは言うものの、結婚市場では男性であっても30代前半でも遅いくらいです。やはり男女とも20代が勝負です。男性の場合は、初婚で婚姻届けを出す人のうちの51%が20代までとなっています。20代後半に限って見ると、全体の37%も占めています。そして35歳までの婚姻届で全婚姻の8割以上となってしまいます。
ところが困ったことに、こうしたシビアな現状を知らないためか、男性の結婚を阻んでいるのは本人の意識のみならず、その母親の意識ということも多いのです。某結婚支援センターで、こんな話がでたことがあります。
42歳の男性会員がいたのですが、最初はお決まりコースの20代後半、30代の女性を希望していて、なかなかうまくマッチングしない。スタッフのサポートのおかげもあって、ようやく40歳のお相手が見つかったのだそうです。
男性も納得の上で成婚退会となる直前に、その男性の母親が反対し、婚約を破棄したといいいます。婚姻統計を見ると、40代男性で結婚経験がない方が結婚する割合は全婚姻の1割を切っていますし、この年代だと、男女ともにほとんどが既婚者となっているために、独身同士で相手を見つけるだけでも本当に大変です。それなのに男性の母親は「相手の女性がその年齢では孫の顔が見られない」という理由で破談させたということでした。
男性のほうが圧倒的に生涯独身で過ごす割合が高い
ここでさらに男性にとってシビアなデータについてご説明しましょう。
50歳まで結婚したことがない人の割合は、現在は「50歳時婚歴なし率」と呼ばれますが、以前は「生涯未婚率」と呼ばれていました。統計上、50歳まで結婚歴がないと、その後結婚することはほとんどないと言ってもいい発生状況であるのは、先ほど岡村さんのケースでご説明した通りです。このため、かつては統計上ほぼ生涯未婚になることから「生涯未婚率」と呼ばれていたのです。
2015年の国勢調査のデータを基に算出した50歳時婚歴なし率を見ると、女性が14.9%なのに対し、男性は24.2%と、10ポイント程度も男性が上回っています。男性のほうが圧倒的に生涯独身で過ごす割合(50代人口に大差がないため、人数も)が高いのです。
図表1を見ると、1985年までは男女ともに50歳時婚歴なし率は低く、むしろ女性のほうがやや高い状況が続いていました。「女性の方が結婚できない」は30年以上の昔の感覚です。ところが1990年にこの割合で男女が逆転し、1995年で男性の50歳時婚歴なし率が急激に上昇しています。なぜでしょうか。
統計をとった時点で50歳の人たちのデータ(正確には算出方法がやや異なりますので後述します)ですから、「1990年調査、1995年調査で50歳だった人が、今も昔も男女ともに統計的結婚適齢期(成婚の発生が集中している)といえる20代になぜ結婚に向けて動かなかったのか」という疑問がわきます。
彼らの20代は1990年50歳の男性=1960年~1970年、1995年50歳の男性=1965年~1975年にあたるので、ちょうど高度経済成長期です。彼らの親は第2次世界大戦戦前から戦後すぐあたりに結婚していると思われます(1990年-50年=1940年)。自分の親のように家庭を持たなくたって、そんなに若いうちからパートナーと助け合わなくたって、何とかなる時代がやっときた、と、親も子も(特に産期への意識が低い男性について)結婚の先延ばし可能意識が強くなっていた時代であったとも言えそうです。
そして、その後も50歳時婚歴なし率が増え続けているのは、経済成長が鈍化したことだけではなく、男女雇用機会均等法(1986年)や育児休業法(1992年)の施行で、男女の役割分担意識が大きく変化しているにもかかわらず、古い結婚形態や時代観の中で成婚してきた親御さんたちの「うちの子がいずれ結婚しないなんてありえないだろう」という考えの甘さが影響していると思われます。育児休業法施行年に生まれた赤ちゃんは現在20代後半男女ですが、その両親はこの法律の恩恵は受けられませんでした。ですので、意外にも20代後半男女の親世代の家族観でさえも、今の時代観とは大きく異なっている、ということになります。