「いくら何でもこんな提案はあり得ない! あまりにもひどすぎる」
母親からA社の資料を預かった筆者は、知人の不動産業者T氏のもとを訪れました。不動産業者のT氏は資料をざっと読んだ後、怒りの感情をあらわにしました。
「いくら何でもこんな提案はあり得ない! ご家族のことを何も考えていないんじゃないの? あまりにもひどすぎる」
興奮するT氏が落ち着くのを待って、筆者は質問をしてみました。
「もう少し良い物件は探せそうですか?」
「それは可能だと思います。ですが、まずはご家族のニーズを把握することが先ですね」
そこで筆者は、面談でヒアリングしたご家族のニーズをT氏に伝えることにしました。
・母親亡き後、長女の生活費の一部に充てたいので家賃収入は今後も得たい
・ローンは組みたくない
・できれば家賃収入は今よりも多くしたい
「家賃収入を娘のために」老親の願いはかなえられるのか
T氏はしばらく考え込んだ後、こう答えました。
「難しいかもしれませんが、ご家族のニーズを満たすような物件を探してみます。お母様亡き後もお金の心配をしないで済むようにしてあげたいですし」
「ぜひお願いします。良い物件が見つかりましたら、すぐにご家族にもお伝えしたいと思っています」
「分かりました。できるだけ早く見つけるようにしますね」
そこまで話したところ、筆者はある不安を口にしました。
「もしA社からお母様に契約をするように促す連絡が入ったら、どうすれば良いでしょうか?」
「手付金も支払っていませんし、契約書も交していませんから、もし問い合わせがあったら『もう少し検討したい。時間をください』とでも言っておけば大丈夫でしょう。その間に何とかします」
「わかりました。それではお母様にもそのようにお伝えしておきます」
それから1週間が過ぎた頃。T氏からご提案できそうな物件が見つかったとの連絡が入りました。筆者は母親に連絡を取り、再び面談をすることにしました。