「2030年代に自動車の主流はEVに」への大きな疑問
日本も2030年代半ばには販売される自動車をすべて電動車とする方針──こんなニュースが駆け巡った。一部で「ガソリン車販売禁止」と報道されたこともあり、混乱もあったが、ただし、電動車にはハイブリッド車(HV)も含まれるため、純粋な電気自動車(EV)がどの程度の比率になるかは不明だ。
一方、イギリスは2035年にはHVも禁止し、すべてをゼロエミッション車とする方針を打ち出し、米カリフォルニア州も同様に2035年にすべてをゼロエミッション車にすると表明している。
このような方針のもと、向こう15年ほどで急速にEVシフトが起き、EVが自動車の主流になる、という論調が最近目立っている。しかし本当にEVは主力になるのだろうか。私はいくつかの理由で疑問に感じている。
第1の疑問:果たしてCO2対策の切り札といえるのか
EVを普及させる目的は、ひとえにCO2排出量削減である。それ以外の目的はない。そのための切り札がEVだ、と一般的には考えられている。しかし、果たして本当にそうなのだろうか?
EVは確かに、走行時に一切CO2を排出しない。しかしCO2排出量を考える時、一つ考慮しなければいけない重要な点がある。リチウムイオンバッテリーの生産には多くの電力が必要で、その電力が火力由来の場合、生産時に大量のCO2を排出してしまうのだ。
バッテリーの搭載量が大きければ大きいほどCO2の排出量は多くなる。ノルウェーのようにほぼすべての発電が水力の国や、フランスのように原子力発電が多くを占める国を除けば、まだ火力発電の比率はかなり高いのが現状である。