英高級紙ガーディアンによると、保健省はまとまった量のワクチンが届く予定の来年1月以降に「接種イベント会場」として、プレミアリーグ「マンチェスターシティー」本拠地のエティハド・スタジアムをはじめ、現在はコロナ専用病院「ナイチンゲール病院」となっているロンドン最大の見本市会場エクセル・ロンドン、そのほか競馬場や大規模屋内競技施設など計6カ所の使用を計画しているという。ソーシャルディスタンスの維持のため、他人との距離を前後左右に2メートルずつとる必要があることから、こうした巨大な施設を使う計画が持ち上がるのも不思議ではない。
「拒否すればレストランや映画館から締め出し?」
このほど内閣に新設されたワクチン展開担当相に就任したナディム・ザハウィー氏は11月30日、「ワクチンの接種を拒否した者は、パブやレストラン、映画館やスポーツ観戦から締め出される」と声明。一時は、接種済みであることを示す「ワクチンパスポート」が発行される可能性を述べる報道さえもあった。
これに対し、マイケル・ゴーブ内閣府担当閣外相は、ザハウィー氏発言の翌日となる12月1日、「政府がワクチンパスポートを導入する考えはない」と同氏の発言について改めて否定。「ワクチンは一人でも多くの人々が受けることを期待する」と国民に対して訴えた。
ただ、ザハウィー氏の訴えは示唆に富む。
「多くの飲食施設や娯楽施設がワクチン接種済みの顧客だけを入れたいと考えるだろう」「免疫保持を示すパスポートは、人々を正常な暮らしに戻すのに有益だ」とする持論を述べた上で、「スマートフォンのアプリを使って、証明できるような仕組みも作るのが望ましい」といったアイデアを示している。
航空業界は一足先に「接種証明書」を準備
ジョナサン・バン・タム副主任医務官は「ワクチンパスポート」にあたる証明書の発行について明確に否定しなかったものの「IT技術を応用して、どんなワクチンをいつ接種したかを示せるような仕組みを作るのは必要なことだろう」と述べている。
一方、航空業界では世界共通で使える検疫パスポートの実用化を目指している。国際航空運送協会(IATA)は11月下旬、「トラベル・パス」と称するアプリのリリースについて発表。予防接種の証明と検査結果が表示されるほか、入国規則や最寄りの検査所の詳細が記載されるとしており、早ければ来年1月中に導入される見込みだ。
こうしたアプリのおかげで国際間の旅がより自由にできるようになる、と喜ぶべきだろう。しかし、英国の若者の中にはワクチン接種はおろか、新型コロナウイルスの存在自体を信じていない人々が一定数おり、「飛行機に乗るために、接種が義務化されるのはとても不愉快」との声も聞こえている。