医療の進化が「病気で死なない時代」を実現する

こうした超長寿時代を実現した背景にあるのが医療テクノロジーの画期的な進化です。

奥真也『「生存格差」時代を勝ち抜く 世界最先端の健康戦略』(KADOKAWA)

さまざまな説や考察がありますが、総合すると生物学的に見た人間の限界寿命は「120歳くらい」と考えられています。つまり「理論上、120歳まで生きることは可能」だということ。では人間がこれまで、その限界寿命を全うできなかったのはなぜか。その最大の理由は「病気によって志半ばで死を迎えてしまうこと」でした。

それが最新の医療テクノロジーの恩恵によって、結核や肺炎を患ったらまず助からなかったという時代と比べても、人間は圧倒的に「病気で死ななくなってきた」のです。

医療テクノロジーの進化においてエポックメイキング的な出来事となったのは「抗生物質の普及と実用化」でしょう。それによって、かつては「死病」と呼ばれていた結核などの感染症を克服できたことは、病死の減少や平均寿命の延伸に大きく貢献したと考えられます。

近年では、タミフルなどインフルエンザの強力な治療薬も登場し、オプジーボ(免疫チェックポイント阻害剤)に代表される画期的ながん治療薬にも注目が集まっています。

また、不治の病と恐れられていたエイズ、難病とされる筋ジストロフィーなどの遺伝的疾患などにも効果が期待される新薬が続々と開発されています。

さらにiPS細胞(人工多能性幹細胞)技術などによる臓器の再生や代替、ロボット手術やAI診断の導入など――今もさまざまな分野で医療テクノロジーは進化を続け、あらゆる病気が克服され始めています。病気で人が死ななくなる「不死時代」はすぐそこまで来ているといっても過言ではないでしょう。

医療の進化によって大敵「結核」を攻略

「死の脅威となる大病」と聞いて多くの人が思い浮かべるのは「がん」だと思います。

厚生労働省によると、2018年の日本人の死因第1位は悪性新生物(がん)、2位が心疾患、3位が老衰、4位が脳血管疾患、5位が肺炎となっています。

長い間、がんは不動の1位に君臨していますが、それ以前に日本人の大きな死因だったのは「結核」、つまり感染症です。世界的に見てもペストやコレラなどの感染症の流行は大きな死因のひとつとなっていました。

しかし前述したように、ペニシリンなどの抗生物質の普及により、結核で死亡する人は激減。医療の進化によって「感染症」という巨大な敵を攻略したことで、それ以降の主な死因は、がんや心疾患や脳血管疾患へと移行していったのです。

そして不治の病、最大の病魔とも言われるがんもまた、新たな治療法や新薬の登場に後押しされ、克服度合いは確実に上がっています。