「生存する確率が90%」と言われたほうが患者は安心する理由

ケース3:角度を変えると、印象も変わる

ある時、あなたが重篤な病気にかかってしまったとします。それを治療するためには、非常にリスキーな手術を受けなければならない、ということをドクターから伝えられ、その手術について詳しく説明を受けることとなりました。

さて、ここからが皆さまへの問いです。2通りの説明方法があるとして、どちらの方がより「その手術を受けてみよう」と思えるでしょうか?

①この手術は、死亡する確率が10%あります。
②この手術は、生存する確率が90%あります。

2つの説明から受ける印象は大きく異なります。きっと、多くの人が②を選ぶことでしょう。論理的には、実は全く同じことを言っていることに皆さまはお気付きですよね。

これは「フレーミング理論」と呼ばれているもので、同じ内容だったとしても、別の角度で見せられる、伝えられることで、与えられる印象が大きく変わる可能性があるというものです。

こんなケースもご紹介しましょう。ある斬新な技術を利用した、新しい「オーディオシステム」をどうアピールするか? という話。そのオーディオシステムは、今までのオーディオでは再生が不可能だった音域を再生することを可能にしました。

さて、これを生活者に訴求する際、どのように表現するべきでしょうか?

消費者は「得すること」より「損しないこと」を重視する

「この商品で、新しい音域を聴くことができます」とするか、「これ以外の商品では、その音域を聴くことはできません」とするかで、印象は大きく異なります。

皆さまはどちらのメッセージにより強く反応するでしょうか。

写真=iStock.com/takasuu
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本ケースは、最初は前者のような訴求方法を行いましたが、ターゲットに全く刺さらず、ほとんど商品が売れない状況に陥っていたそうです。ターゲットであるオーディオファンは、比較的保守的であり、今までのものを否定するようなメッセージに嫌悪感を抱いたのかもしれません。それは変化を嫌う「現状維持バイアス」という心理です。

そこで、あるコンサルタントの指導に基づき、メッセージを後者のように変えたところ、一気に売れ出した、というエピソードです。

これらの事例は「損失回避性」という理論が関係しています。

生活者は無意識に、得することよりも損することを避けようとしてしまうという心理です。実は同じ内容を言っているにもかかわらず、「損をしてしまう」「リスクがある」という側面で伝えることによって、よりインパクトを出しているのです。