商品をうまく売るにはコツがある。マーケティング戦略のコンサルタントである楠本和矢氏は「これからのマーケティングには行動経済学の知見が欠かせない。行動経済学を使えば、より高い商品を買ってもらうことも簡単にできる」という——。(第1回/全2回)

※本稿は、楠本和矢『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』(イースト・プレス)の一部を再編集したものです。

テイクアウトの容器に入った料理
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予想できない消費者の「非合理な判断」

ここから、生活者の「非合理的な判断」の典型的なケースをいくつかご紹介します。本書で活用する理論については、本章の参考編にてご説明しますが、まずはここで少しだけイメージを持って頂きましょう。

前述のダン・アリエリー教授の名著『予想どおりに不合理』で紹介されている事例が非常にわかりやすいので、そこからいくつか引用し、ケース1~4としてご紹介します。

ケース1:比較対象によって、判断が変わる

ある家電商品のメーカーが、今まで世になかった、家電商品を発売しました。当時としては大変斬新な商品であり、期待も大きかったのですが、それとは裏腹に売れ行きは鈍いものでした。

そこで同社は、ある賭けに出ました。それは、その商品よりも50%以上高価な高級版の製品を投入するということでした。元々売れていない商品のさらに高級版を出すという判断は、マーケティング戦略の常識では発想しえないものです。

しかし、その賭けは見事に当たりました。新たに「高級版」を発売した後、なんと最初に発売した方の商品が飛ぶように売れ始めたとのこと。

なぜこんなことが起こったのでしょうか?