バリエーションを減らしたら購入率が10倍に
ケース4:豊富な選択肢があると、逆に買わない
ここでは『選択の科学』(文藝春秋)という名著で紹介されている興味深い実験の話を引用します。あるスーパーのジャムの試食コーナーで、①24種類のジャムを用意、②6種類のジャムを用意というように2つに分けて、どちらが売れるかの実験を行いました。
論理的に考えると、選択肢が多い方が細かいニーズに対応できるはずなので、多くの種類がある方が有利に思えます。しかし実験の結果としては、6種類のジャムを用意した場合のほうが、試食に来た人の中の購入した人の割合が10倍となったそうです。
もちろん、実際は陳列方法だとか、商材の種類にもよるかと思いますので、一概には言えませんが、少なくとも言えることは、単純に選択肢が多ければ多いほど、必ずしも買いたくなる訳ではない、ということです。
多すぎる選択肢はストレスを生む
なぜそういう現象が起こるかと言えば、生活者は選択肢が多くなると、混乱とストレスが生じ、物ごとを新たに選択することを回避し、今と同じ日常をそのまま送っていくことを選択しようとする、という傾向があるからです。
それは「選択回避の法則」と呼ばれる心理です。
あえて選択肢を限定的にすることで、選択時におけるストレスを低減するとともに、一つ一つの選択肢により注意を払うことができるので、結果として購入に結びつきやすくなるのです。皆さまも、選択肢が多すぎて、結果的に選べなかったというような経験はありませんか?
あるアパレルの通販サイトは、期間限定で、あるブランドに特化し販売するという手法で成功を収めています。
私自身もこのサイトをよく使っています。多くのブランドが、ここで初めて知るものなのですが、しっかりフィーチャーされているゆえに、見ているうちに興味を持って、買ってしまっていることが非常に多くあります。しかも、割と衝動買いに近い感覚で。
しかし、それらがECサイトの平場に、その他大勢と並んでいたとするならば、きっとそのブランドを購入していませんし、そしてそのカテゴリーのアイテム自体購入していなかったような気がします。あくまで自分の経験としての話ですが。