「より高い商品」があると高い商品でも買ってしまう

生活者の心理なので、100%それだとは言い切れませんが、恐らく高級版を隣に並べたことで、元々の商品が「割安に見え出したから」なのではないでしょうか。

これは「選考逆転」と言われている心理です。ある対象となる選択肢について、それが提示された状況や順番などによって、選考態度が変化してしまう心理を指します。

これを使った手法は、おとり効果(Decoy effect)と呼ばれるもので、色々な場面で使われています。

例えば、あるお弁当屋さんは、元々1種類だった幕の内弁当(490円)をもっと売るために、ラインナップを「450円、上490円、特上690円」の3種類に増やしました。そうすると、「上490円」が一番売れ、幕の内弁当全体の売上は前年比で大幅な増加を達成したそうです。

3つのグレードの二段階目が最安値に寄っているので、何となく割安感を抱いたからかもしれません。レストランのメニューでも、そういう並べ方をしているものは多いです。

生活者側に、絶対的な価値判断のスキルがない、もしくはあるようで実はない、という状況において、あたかも「合理的に見える判断の基準」ごと提供され、それに乗せられてしまった、ということなのでしょう。

新商品が有名ブランドとコラボする理由

ケース2:「それが何の仲間か?」が重要

ある、全く新しい色の真珠の開発に成功した人がいました。彼は早速、その真珠を発売しましたが、当初は思うように売れません。

この状況を打開すべく、彼は友人である、ある超高級ジュエリーショップの店長にお願いし、その店のショーウィンドウにその真珠を陳列してもらうことにしました。それに加え、元々の価格よりもさらに高い値札をつけてみました。

イタリア・シエナの市場にいくつものオレンジブラウンの革製バッグが置かれている
写真=iStock.com/krblokhin
※写真はイメージです

また、ハイステータスな雑誌に、ダイヤモンド、ルビーなどの横に、その真珠を並べた全面広告も掲載。するとまもなく、どんどん売れ始めていったとのこと。一連の取組みで、その真珠は、ダイヤなどと同類の、非常に価値のあるものだと認識されたのではないでしょうか。

これは、生活者が問題解決や購買決定などの行動を決定する際、簡略化されたプロセスを経て結論を得ようとする、「ヒューリスティクス」と呼ばれる心理に基づいています。

このケースでは、その「見たこともない新しい商品」について、元々何の価値判断のスキルもないところに、すでに高い価値が認められている商品と「同カテゴリーのもの」に見せることによって、「この新しい商品もきっと同じような価値があるはずだ」と、短絡的に判断させたのです(この方法は、マーケティング戦略においてかなり多く登場します)。

割と新しめのブランドが、有名ブランドとのコラボレーションを展開するのも、まさに狙いは同じです。注目を集めるきっかけをつくるだけでなく、そんなメジャーなブランドとのコラボができるなんて、きっとそのブランドも凄いのだろうと、印象付けようとしているのです。