「非合理な消費者」を狙い撃ちにする重要な武器

以上のように、ケースとして冷静に眺めてみると、なぜこんな非合理的な判断をするのだろうかと思えてしまいますが、その場その状況にいる生活者とはそんな判断をするものです。

以上、行動経済学に関する、いくつかの有名なケースをご紹介しました。

楠本和矢『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』(イースト・プレス)
楠本和矢『トリガー 人を動かす行動経済学26の切り口』(イースト・プレス)

行動経済学とは、コトラー教授のマーケティング戦略とは異なり、先程説明した「ホモ・エコノミクス」を前提とせず、実際の生活者による実験や観察に基づいた、心理的、感情的側面に即した分析を行うもので、現実の世界にある様々な要因がもたらす、生活者の行動パターンの究明を目的としたものです。

調査をしても、生活者の「欲しいもの」「やりたいこと」が見つからない、生活者の「論理性や合理性」だけを拠り所としても手がかりが見つからない、そんな成熟社会におけるマーケティングをいかに考えるべきでしょうか。

行動経済学の、生活者が非合理に判断してしまう可能性を突いた、「あたかも、元々欲しかったような気持ちにさせる」「自然に購入してしまう流れをつくる」というアプローチは、まさにこれからの時代におけるマーケティング戦略策定において、非常に重要な武器となると考えています。

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