ロシアと中国を見誤った米国の政策

オバマ政権はロシアとのあいだで核軍縮を進めたが、ウクライナ・クリミア問題で決定的な決裂に至る。中国との間でも、もはや責任ある大国として、拡大されたリベラルな国際秩序に統合される未来を描くことは無理であることを悟る。一見、ロシアと中国の無軌道な行動によって米国が政策転換を迫られたように見えるが、実際にはほかならぬ米国政府こそがロシアと中国を見誤り、誤解に基づく政策を推し進めていたのだ。

トランプ政権は、レバノン戦争介入以来の米国の中東への直接介入政策を転換させ、地域大国に影響力を及ぼすことで力による均衡を図る政策へと移行させた。

バイデン政権で国務長官候補として名前が挙げられているブリンケン氏は、自らも深く関わったオバマ政権の8年間における見込み違いに自覚的だ。バイデン政権はこの見込み違いの反省の上に立った政策を展開するだろうと思われる。であれば、バイデン政権の外交政策思想も、大枠ではトランプ政権とさほど変わらないだろう。

トランプ政権の対中政策は経済ナショナリストと新冷戦派の安全保障屋との抱き合わせによって規定されていた。トランプ大統領自身は本質的には経済ナショナリストであり、米中の第一段階合意がそうであったように、短期的な果実を得られれば妥協する傾向にあった。自国の権益ばかりに固執する経済ナショナリストを極めれば、国際秩序的には二極や多極の許容に向かう。バイデン政権は中国にとってトランプ政権よりも歓迎されざる一面がある。それは民主党政権では人権派が大きな役割を果たすからだ。

中国は、トランプ政権によって自国の戦略の再定義を迫られた。今後は誰が大統領になろうが中国は認識を変えないだろう。残った不確実性は、米国が自らの「帝国」の手の広げすぎをどのように再定義していくかということだ。

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