※本稿は、平康慶浩『給与クライシス』(日経プレミアシリーズ)の一部を再編集したものです。
どんな状況でも転職に向いている業界の条件は大きく変わらない
今いる会社の経営幹部たちに変化に対応してゆけるスキルがあるのなら、仮に業界動向や会社の業績に不安があったとしても、そこで出世していくことを考えるのが一番効果的だ。しかしそうではなかった場合には、咲くべき場所を変えなければいけない。
では、どんな業界のどんな会社に移るべきだろう。そして、そもそもそれらの会社に受け入れてもらうにはどう備えればよいだろう。
2019年までの外部労働市場は、基本的に売り手市場だった。DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIの発展に沸くIT業界や、インバウンド景気による小売り、飲食、宿泊業などでは、需要に対して供給が追い付かず、求職者にとって有利な条件での転職も可能だった。
しかし脱メンバーシップの不透明な状態では、新卒採用、中途採用のいずれにおいても人材の需要が減っている。買い手市場になっていては、なかなか転職も難しい。求められるスキルのハードルも高くなりがちだ。
ただ、どんな状況であったとしても、転職に向いている業界の条件は大きく変わらない。それは、人材需要が高く売り手に交渉権がある状態で、なおかつ市場が伸びている業界だ。一見人材需要が高いことと市場が伸びていることは一致しそうだが、案外そうではない。たとえば離職者が極めて多い業界の場合、常に人材需要は高いが市場は伸びていない場合もあるからだ。