大川さんの家に何度か遊びに行ったことがある。豪邸ではなく、まあまあの一軒家だった。

奥さんが、「この人も予想だけやってりゃ、もっと広い家に住めたのに。馬券さえ買わなけりゃね」とこぼした。

年末、大川さんに「今年はどれぐらい馬券で儲けましたか」と聞いた。

大川さん、「今年は2000万円ぐらいの損ですかね」と、悠然とおっしゃる。

「2000万も」と驚くと、「去年は3000万でしたから、今年はいい方ですよ」。予想は神様だったが馬券はただの人だった。競馬というのはそれほど難しく、深遠なものなのである。

外国産馬も招待して行われるジャパンカップ

ジャパンカップというのは1981年に創設された国際招待競走だ。国際競馬統括機関連盟(IFHA)が公表している「世界のトップ100GⅠレース」によると、格付けランキングでは世界7位、日本のレースでは一番格上のレースである。

東京競馬場で行われ、優勝賞金は3億円。世界で通用する馬の育成を目的として創設されたが、1990年までの10年間で外国招待馬が8勝に対して、日本馬はカツラギエース(1984年)とシンボリルドルフ(1985年)の2頭しか勝てなかった。

当初こそ日本馬と外国産馬の力の違いを見せつけられたが、90年代に入り、トウカイテイオー、エルコンドルパサー、スペシャルウィークなど日本馬の優勝が続き、現在は、外国産馬の参戦はあまり見られなくなってきている。

ちなみにジャパンカップのコースレコードは2018年に優勝したアーモンドアイ(3歳牝馬)の持つ2分20秒6である。

このレースは数々の記憶に残るレースを生み出してきたが、私が一番印象に残っているのは、3歳牝馬のジェンティルドンナと4歳牡馬オルフェーブルのゴール前の死闘である。

競馬歴56年が思う「気がかりなこと」とは

ジェンティルは秋華賞を勝った三冠馬、オルフェは世界最高のレース凱旋門賞で2着(翌年も2着)という実績のある強豪である。

レースは四コーナーを回って坂を上ったところから、オルフェとジェンティルの一騎打ちになった。オルフェが外から抜け出ようとしたとき、内ラチを突いたジェンティルがオルフェにぶつかっていったのである。

両馬鼻づらを合わせてゴールに飛び込んだが、わずかに鼻差でジェンティルドンナが優勝した。この馬は翌年のジャパンカップも勝ち、歴史に残る名牝として語り継がれている。

今年はその時以上に白熱したレースが見られるかもしれないが、長年競馬を見てきた私には、気がかりなことがある。