創業者の事故死後に急成長した選挙集計会社

そんな中でも一部の注目を集めたのが、米軍が大統領選の不正疑惑を調べるため、ドイツに置かれていたサイトル(Scytl)社という選挙集計会社のデータベースを押収した……という怪情報だ。その真偽の重要性について、おいおい述べてゆくことにする。

サイトル社は世界各地で選挙集計サービスを提供し、上述のドミニオン社のデータ管理を提供しているスペイン企業である。元はバルセロナ自治大学のアンドリュー・リエラ博士が2001年に創業、2006年までは小さなベンチャーであったが、同年3月11日に創業者のリエラ博士が突然交通事故で死亡し、その跡を継いだペレ・ヴァレス氏がCEOに就任してから、急拡大を始めた。

ヴァレス氏は、リエラ博士の死の2年前にサイトル社に財務責任者として入社したばかりだったが、それまではオバマ氏のお膝元シカゴのナスダック上場の通信企業で最高財務責任者を務めていた。2008年の米大統領選挙ではオバマ陣営に大金を寄付し、前出のジョージ・ソロス氏とも関係があるとも噂される人物である。

そのヴァレス氏は、リエラ博士の死の直後に複数の投資ファンドの出資を受け入れ、そこから同社を毎年70%成長させ、瞬く間に世界35カ国以上に拠点を構えるグローバル企業に育てた。

※編集部註:初出時、サイトル社のCEOの名前を「ペレ・バジェス氏」と表記していましたが、「ペレ・ヴァレス氏」と訂正します。(12月3日17時00分追記)

米国民が、選挙の集計プロセスを追跡できない

このサイトル社を支えた人物や企業・ファンドを少し見ておく。まずは同社に出資した投資ファンドの一つ、ナウタ・キャピタルとそのベンチャー・パートナー、ドミニク・エンディコット氏だ。氏が2006年から15年にかけて取締役を兼任していたCarrier IQという会社(非公開)のスマホ向けソフトが、2011年に物議を醸した。ユーザーの同意なしにキー入力やメッセージの送受信、位置情報などを収集し、その解析結果を外部に向けて送信していた、というのだ。

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しかし同年、その大騒ぎを横目にCarrier IQ社に堂々と出資していたのがナウタ・キャピタルとエンディコット氏だった(ちなみにCarrier IQ社は、2009年には中国のファーウェイとも提携している)。そんな札付きのファンドから資金を得て、サイトル社はオバマ政権下の2012年にフロリダ州の選挙集計業務を受注したことを皮切りに、今では米国の多くの州や郡での同業務を請け負っている。

サイトル社の業務の大きな問題点は、海外にある同社のサーバーに投票結果がいったんアップロードされてしまえば、その集計プロセスを追跡するのはほぼ不可能だということだ。同社のヴァレスCEOはかつてスペインのメディアに対し、「選挙の不正行為は(中略)投票所が閉まった後や、投票用紙が入った箱が集計センターに運ばれる際に発生する」と述べているが、今回、まさにそんな自社での不正が疑われているのである。