総務省提案の「受信料支払いの義務化」をNHKが拒否したワケ

とりわけ未設置者の届け出義務化について、武田総務大臣が11月7日に「まったく話にならない問題だ」と一蹴。NHKは、ほどなく撤回に追い込まれた。

さらに、設置者の届け出義務化についても、「徴収の効率化よりも改革が先」「国民の理解が得られておらず時期尚早」など反対意見が続出し、ネット上でもNHKへの批判が噴出。総務省も困惑し、展望が開けない事態に陥った。四面楚歌の中、NHK内でも「やはり無理筋だったか」とぼやきも聞こえてきた。

とはいえ、実は、受信料をめぐる綱引きは、複雑さを増している。

NHKのテレビ設置・未設置の届け出義務化の要望と同じタイミングで、総務省が受信料支払いを法律で義務化することを提案したのだ。

受信料の100%徴収に道を開くものだけに、NHKは総務省案にもろ手を挙げて歓迎するかと思いきや、逆に「NHKが要望したものではない」と拒否したのだ。

これには、かつて菅義偉総務大臣が支払い義務化とセットで受信料の2割値下げを迫ったため、法制化が実現しなかったというトラウマがある。一見、おいしそうにみえる総務省の提案の裏には大幅な受信料値下げ圧力があるとみられるだけに、安易に飛びつけないというわけだ。

NHKの実利より国民のメリットが成否を分かつ指標に

そして、11月20日。総務省の有識者会議がとりまとめた報告書では、NHKが要望したテレビ設置の届け出義務化も、総務省が提案した受信料の支払い義務化も、見送られた。世間の耳目を集めた前田提案は、わずか1カ月でお蔵入りになったのである。

受信料制度を巡っては、2017年の最高裁判決が合憲と判断。その影響は大きく、支払い世帯の割合は2009年度の70%から2019年度には83%に増加。受信料収入は、2018年度に過去最高の7122億円にまで膨れ上がった。それだけに今、ことさらに受信料徴収の強化策を講じようという姿勢は賛同を得られにくい。

次々に繰り出される「前田砲」には目が離せないが、「豪腕」と「強引」は紙一重。

NHK改革は、「受信料制度の見直し」「業務のスリム化」「ガバナンス改革」の三位一体改革を抜きにして、国民の支持は得られない。NHKにとって実利があるかどうかではなく、国民にとってメリットがあるかないかが、成否を分かつ指標になることは言うまでもない。

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