ジェフ・ベゾスが「従業員は財産」と直接言葉で伝えるワケ

経営学では、結束力の強い組織のほうが、結束力の弱い組織よりも業績がよくなる傾向があきらかになっています。ですから、アマゾンですらCEOのジェフ・ベゾスが「アマゾンで働く従業員たちがいかに会社にとって大切な財産であるのか」を直接言葉で伝えるのです。

会社としては終身雇用を放棄しても従業員の帰属意識は確保したい。その目的から月に一回の社員ミーティングや毎朝の朝礼など、会社によってスタイルは異なりますが経営ツールとしての集会が設定される。その中でもカジュアルな空気で会社幹部と従業員が交流できる忘年会は、経営側にとっては大切な経営ツールなのです。

新型コロナと同じタイミングで、日本企業全体に働き方改革の大波が押し寄せています。これまでの慣行とは違う、時代にあった新しい働き方を企業は導入する必要があります。その中で経団連が打ち出しているのがメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用への移行です。

日本の大企業がジョブ型雇用に移行するということは、表面上は一人ひとりの従業員が何のプロなのかがはっきりすることを意味します。一方、根底ではそれまでのように従業員が会社組織のメンバーであるという前提が薄まります。

「君は生産管理のプロなのだから、会社がいまの事業から撤退したとしても、他の企業でプロとしての仕事を見つけることができるだろう」と会社から見放される時代がもうすぐ来るわけです。しかし重要なのはそうしたドライな関係性が強調されるのは会社の危機下だけの話です。

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会社としては平常運転の期間はそれでも従業員が組織のメンバーとして結束力を持ってくれたほうがいい。だからジョブ型へと働き方の前提が変わった世界では、経営ツールとして今まで以上に忘年会の重要性は高まるのです。

ここが飲食業界にとっては重要な変化かもしれません。これまでは放っておいても企業組織の中で惰性的に忘年会が計画され、部署の中で幹事が決まり、その幹事が自分で忘年会プランをネット上で探して予約してくれていた。しかしアフターコロナではいったん中止ないしは延期になった忘年会が、従業員側では「とくにやらなくてもいい」というように考えが変化する可能性があるのです。

そこで年中行事としての忘年会を継続させるために必要なのは、これまでのウェブ広告を用いたプル型ではなく、プッシュ型の需要喚起になる可能性があります。ぐるなびやホットペッパーグルメなどGoToイートの中核となったプラットフォームの営業部隊が大企業の上層部や管理職層に忘年会の重要性を説いて回って結束力を高めたいという需要を掘り起こすべきです。具体的な営業アプローチはともかく、飲食業界の営業先は若手の幹事くんから企業の幹部や人事部の管理職へと変わる可能性があるということです。