なぜワークマンで買い物をする人は値札を見ないのか

次に、価格やコストについて考えた。

あるとき、店舗でお客様が製品を購入する様子を見ていた。しばらくすると、どこか違和感を覚えるようになった。お客様が製品を見つけてからレジに到着するまでが早い。さらに観察を続けると、お客様が値札をまったく見ていないことに気づいた。

土屋哲雄『ワークマン式「しない経営」 4000億円の空白市場を切り拓いた秘密』(ダイヤモンド社)

何かを購入するとき、価格は大事な選択肢だ。値札を見て思い直し、別の製品を選んだり、別の店に足を運んだりすることもある。

ところがワークマンのお客様は、機能やサイズはタグで確認しているが、値札は見ないでレジまで製品を持っていく。レジでは価格が表示されるが、高いとも安いとも言わず、そのままさっと支払って店を出る。これは大変な信頼感だと思った。

ワークマンの製品は、他社製品に比べて機能がよく、安いことをお客様が確信している。

じつは製品価格は値札を見なくてもお客様にわかるよう規則性を持たせていた。

●普通の防寒ブルゾン 1900円(税込)
●耐久撥水防寒ブルゾン 2900円(税込)
●完全防水ブルゾン 3900円(税込)

と機能で価格がわかるしくみだ。それが「値札を見ずに買う」につながっている。

「作業服ならワークマン」と認識されている

ワークマンは作業服という小さな土俵で、高機能な製品を安く提供してきた。

ワークマンの作業服は1500円(税込)でも伸縮性や通気性などにすぐれ、高機能だ。競合メーカーは低価格帯で同レベルの製品を個人向けにつくれず、一つ上の3000円台の価格帯に移行していた。

どの業界にも言えることだが、他に先駆けて行動を起こすと競争優位に立てる。

消費財を製造しているメーカーが製品を先に出し、消費者から「あの製品ならあの会社」というイメージを定着させてしまう。「お酢のミツカン」「マヨネーズのキユーピー」などがいい例だ。

早くから個人向け作業服の旗手として事業を行ってきたために、お客様に「作業服ならワークマン」と認識されている。そのため後発企業が同じポジションを獲得しようとしたら、莫大な投資が必要だ。新規参入は非常に難しい。

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