自分も加害者臨床に携わらなければわからなかった

私も含め、日本社会で男性として生きてきた人の目に映る光景と、女性として生きてきた人の目に映る光景は、大きく異なると思います。もしかすると私自身も、加害者臨床に携わらなければ、女性の目にこの社会がどんなふうに映っているのかを想像する機会はなかったかもしれません。仕事をするうえでも家庭生活を営むうえでも優位でいられたのは自分が男性であるからというのも大きいのに、それを自分の力だけで勝ち取ったものと信じて疑わなかったでしょう。

男性の中で日ごろから「自分は女性に対して支配的な立場でいる」と自覚している人は少ないはずです。しかし、多くの男性のなかに男尊女卑の思考パターンは確実に根付いていて、自分でも意識しないまま女性に対して支配的な態度で臨んでいる人がまだ多くいます。

それはすべてこの日本社会から学習したものです。男尊女卑という言葉を知らない頃から、両親や祖父母の関係から、または学校教育から、さらにテレビなどのメディアから、「男性は女性より優位だ」というメッセージを受け取り、その考えに慣れ親しんでいきます。男性だけとは限りません。多くの女性にも男尊女卑の考えは刷り込まれており、内面化しています。

誰もが持つ「加害者性」と向き合うしかない

長い時間をかけて身につけてきた価値観をひっくり返すのはむずかしいものですが、声を上げる女性たちの声を社会がこれ以上無視することはあってはならないでしょう。男性と女性とは対等であり、男性というだけで有利になる、あるいは女性というだけで不利になることがあればそれはただちに是正されるべきことです。

われわれは古い価値観を手放し、新たな価値観をインストールすることができます。人間はよりよい人生にしていくために学習することができるのです。男女平等の実現というと壮大な話だと思われるかもしれませんが、誰もが自分より立場の弱い者や力の弱い者を尊重することがその第一歩だと思います。そのためには、自分の中にある「加害者性」と向き合う必要があります。それは目をそらしたくなるような痛みを伴う作業かもしれませんが、その変化に伴う痛みこそが尊重される社会であってほしいと願っています。

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