警察に対するドメスティック・バイオレンス(DV)の相談件数は、ここ数年右肩上がりに増えている。加害者のほとんどは男性だが、彼らはなぜ暴力をふるうのか。長年、DV加害者の暴力克服プログラムに携わる精神保健福祉士・社会福祉士の斉藤章佳氏は「彼らを駆り立てているのは“恐れ”の感情だ。自分の優位性が揺らいだとき、恐れを否認するために暴力を使う」と説く——。
おびえて身を屈める女性の手前に、男性の握りこぶし
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性犯罪に関しては加害者の99.8%が男性

先日、クラブチームでサッカーをしている小学生の長男から「パパ、知ってる? 昨日、JリーガーがDVで逮捕されたよ。いくらいいプレーをしてても女性にDVをしていたらだめだよね」という話を聞きました。私はその話を聞きながら、プロスポーツ選手がDVをしていたという話にはさほど驚きませんでしたが、長男がDVという言葉を知っていて、小学生ながらその言葉の使い方や認識が的確だったことにとても驚きました。

DVは親密な関係性の中で起きる暴力であり、いくら優秀なスポーツ選手でも、仮に社会的地位がある人でも、絶対に許されない人権侵害行為です。

私は約15年前から、性犯罪者の再犯防止プログラムやDV加害者の暴力克服プログラムに携わってきました。性犯罪もDVも加害者の大部分は男性です。特に性犯罪に関しては、法務総合研究所の調査によると、加害者の99.8%は男性で、被害者が男性であってもその加害者のほとんどは男性が占めています(法務省「平成27年版 犯罪白書~性犯罪者の実態と再犯防止~第6編 性犯罪者の実態と再犯防止」より)。