1年以内に党内最大派閥「安倍派」が誕生する

その安倍氏。今後どんな政治活動をするのか。当面注目が集まるのは、党内最大派閥・清和政策研究会(通称・細田派)への復帰だ。細田派は、その名の通り細田博之元党幹事長が領袖を務め、7年8カ月間の安倍政権を支えていた。安倍氏の父・晋太郎氏が会長を務めたこともあり(当時は清和会)、安倍氏もこの派閥にわらじを脱いだが、12年、首相就任の時、離脱していた。

首相退任した今、安倍氏は古巣への復帰に意欲満々だ。周囲には、次の衆院選までは「一兵卒」にとどまり、選挙後に派閥復帰する考えを伝えている。このことは、永田町では大きなニュースとして伝わる。

安倍氏が細田派に復帰するということは、自動的に即同派の会長となることを意味する。呼称も「安倍派」に変わる。来年秋までには衆院選は必ず行われるから、安倍氏は1年以内に自民党最大派閥のリーダーとなることが固まったといえるのだ。

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最大派閥のリーダーとして辣腕をふるった先人としては、1970年代から80年代にかけて「数の力」を背景に闇将軍といわれた田中角栄氏のことを思い出す。安倍氏は田中氏のようになれるのだろうか。

その可能性は十分あると考えていい。その理由は3つある。

安倍氏が「闇将軍・田中角栄」のようになれる3つの理由

①「安倍株」は高まっている

まず安倍氏が求心力を維持して退陣したことを指摘したい。

辞任理由は、第1次政権の時と同じように潰瘍性大腸炎の悪化による退場だったが、1度目の辞任の際に「政権投げだし批判」を受けた反省から、今回は、新首相が決まるまではきちんと政権運営する考えを表明。記者会見での立ち居振る舞いが潔く見えたことで国民の支持は上がった。政権末期に支持が上がるのは珍しいことだ。

いいムードで菅義偉氏にバトンを渡し、その効果もあり菅政権は順調なスタートダッシュに成功した。現在の「安倍株」は自身の政権末期よりも高まっている。