身近な人がコーチングしていくことが大切
「ためこみ症」に関して有効な治療法はまだ確立していないが、この公務員男性の場合なら、一度家の中の全てを業者に片づけてもらい、医療機関や行政につながることができれば、死に至るような重症化を防げるかもしれない。中尾教授も「食べたら片付けることなど、一つ一つの行動、整理整頓の仕方を、身近な人がコーチングしていくことが大切」という。
特に重要なのが「捨てる行動」だ。
「物によって実用性を考えた保存期間があります。レシートなら1年、新聞なら3カ月、大事な物なら3年など“保存期間の決まり”をつくり、その期間を経過したら捨てていく。洋服なら1年着なかったものは捨てていく、思い入れのある物なら部分的に切り取って保存するというやり方もあるでしょう。一つひとつの物に対してどうして捨てられないのか、ためているのか、本人なりの意味があるので、それを誰かが聞いてあげ、一緒に考え、捨てる行動をサポートできる形が望ましいですね」
その人の将来を一緒に考える人が隣にいるといい
「インターネットでは買わない」など、入手ルートをしぼるのもいい。石見さんも「インターネットによる買い物で“欲しい欲”が簡単に満たせることもゴミ屋敷化が増える一因」と指摘している。
ためこみ症の人は、「未来へのプランニング」が弱い傾向にある。食べるかもしれない、あとで必要になるかもしれない、セールだったから買っておこうなど、視点が常に“今”にしか置かれていないのが特徴だ。
その人の将来を一緒に考える人が隣にいるといい。そうすれば一人で没頭するのではなく、誰かと分かち合う時間が生まれ、何かを埋め合わせるために大量の物をためこむ意欲が低下するのではないかと思った。(続く。第4回は11月20日配信予定)