「健康を守るのに家ほど大事なものはない」

「年を取るとともに寒いとなったら工夫をしないと。これぐらいは我慢できる、という気持ちはダメ。24時間のうちの半分以上は家で生活していて、人生100年なら50年以上は家の中という計算。健康を守るのに家ほど大事なものはない」

梼原町の中心部から車で40分ほどの山間部にある松原地区に住む、82歳の下元廣幸さんはそう言い、「松原地区では80代前半の私も若いほうに入る」と笑います。60代はまだま“若造”というほど、梼原中心部よりも松原地区では高齢化が進んでいます。

下元さんの家は築24年と、それほど新しくはないのですが、窓を複層ガラスにしているため、室内にお邪魔すると、鋭い寒さは感じませんでした。お会いした時は夜で、外気温は7度でしたが、下元さんの家の玄関先は20度近くまであったのです。

後ほど詳しく解説しますが、室内を暖かくするポイントは「窓」にあります。冬場は窓からおよそ60%の熱が逃げます。そのため、通常の窓に内窓をプラスしたり、複層ガラスの性能のいい窓に交換したりすると、暖房の効きがよくなって室内の寒さが和らぐのです。

写真=iStock.com/Akchamczuk
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私が梼原町に行き、一番驚いたことは、どの家にも複数個の室温計が置いてあることです。みなさんの家にはありますか。今、この本を読んでいる部屋の室温は何度でしょうか。ぜひ一室に1個、室温計を置き、今何度なのか、常にチェックしてください。だんだん肌感覚で“健康にいい室温”がわかるようになってきます。

「着込まない」ことが脳の健康につながる

町の中心部に14年前、美容室兼自宅を新築した戸梶圧美さん宅は、暖房なしでも室内が均一の温度に保たれていました。自宅と美容室がひと続きの構造で、美容室は比較的日当たりがよく、自宅はあまり日が入らないのですが、室温計はどの位置でも18度以上を示していました。戸梶さんは「今の家は最高。健康には食事も運動もだけど、環境も大事よね」と繰り返し言います。

「前の美容室では暖房をなんぼ入れても、お客さんから足元が寒い寒いって言われていたんです。でも今はお店も自宅も、誰からも寒いとは言われません。真冬でなければ暖房がいらないぐらい暖かい。だから私もたくさん着込みません。外が雪でも、部屋着のワンピース1枚でいられる。羽織っても1枚です」

この「着込まない」ということが、居住者の室内における活発性を増し、筋肉量の維持、脳への健康につながることがわかっています。