「ボケと突っ込み」の“師弟愛”コンビ

平木と井上の2人はちょうど一回りの年齢差があり、話を聞くうちにそこはかとない“師弟愛”のようなものが感じられた。いや、漫才に例えれば「ボケと突っ込み」の関係で、平木の突っ込みを井上のボケでうまくかわして、実現に向けて一歩一歩前に進んできたといえようか。

「平木さんは社内では有名人で、酒を飲んで暴れたとか、いろいろ逸話のある豪快タイプ。僕はどちらかというと、胸がキューッとなって視野が狭くなる繊細タイプ。技術的にも平木さんは攻めの人で、非常にアイデアに優れているので、ややもすると発散型になってしまうきらいがある、生意気なことを言わせてもらえば」

言葉にこそ出さなかったが、暴走しがちな平木を陰で支えてきたのは自分、という思いが井上にはあるのだろう。絶妙の師弟コンビが約10年の歳月をかけてまとめ上げた汗の結晶が、世界初のハイブリッド建機に結実したのは確かである。

インタビューも終盤に差しかかり、平木は「これは個人的なことで話していいものかどうか」と、ためらいがちにある事実をぽつりともらした。

「10年ほど前に女房をガンで失って、あれこれ考えるところがありました。とくに技監という立場でいろいろコメントするだけであれば、波風立たずに中途半端のまま終わってしまう感じがして。何かこんなことをやった、こんなものを残しておきたいという気持ちは、定年が近づくにつれてどんどん大きくなっていきました。それもこれも女房の死というものが影響しているからなのですが……」

団塊技術者のいちずな執念だけでなく、最愛の妻を亡くしてぽっかり空いた心の空洞が、平木をハイブリッド建機完成に駆り立てた究極の原動力だったのかもしれない。(文中敬称略)

(川本聖哉=撮影)