すったもんだを繰り返しながら、キャパシタを車体後部のスペースにどうにか収容することができた。走行風で電池を冷やす乗用車と違って、建機はそれができないので、新たに水冷の冷却装置を取りつけ、高熱などの不具合があるとセンサーが感知して運転席に知らせる警告装置をつけた。
今回市場投入されたハイブリッド式油圧ショベルは、通常モデルに比べて燃費が平均25%向上し、二酸化炭素(CO2)排出量を1時間当たり約10キロ減らすことができる。浚渫工事のような旋回運動が頻繁な工事現場では、最大40%程度の燃費低減が見込めるという。
ただし価格は2700万円に設定され、従来機種に比べて1.5倍する。まだまだ急速な普及は期待薄のように思えるが、コマツは「燃料費を削減できるため、年間2000時間使うとして4、5年で元が取れる」と説明している。
とりわけ、新商品の有望市場と見ているのは経済発展著しい中国である。日本の建機の平均稼働時間が年間1000時間なのに対し、中国はその3~4倍にのぼる。そのため、環境保護・省エネルギーの制約がますます強まるなか、投資と回収の観点から引き合いが強まるのではないかと期待をかけているわけだ。
それにしても、今年度の販売目標は国内向けに限定30台と、かなり控えめな滑り出しである。建機には似つかわしくない東京の六本木ヒルズで大々的な記者発表を行い、新聞・テレビでも目立つ広告をぶち上げた割にはあまりに慎重な数字ではある。米国発の金融危機による市場低迷が背景にあるのかと想像して平木に尋ねると、うまく質問の核心をはずしてこんな答えを返した。
「まあ短期的なところでこういう商品を見てもらっても仕方がなくて、金融危機が収まったときが本当の勝負ですね。だから、ある意味でわれわれはいい時間を与えてもらったなと思っているんです。これからさらに完成度を高め、次の弾をこめて、時期が来たときに一気に飛躍できる体制を整えておけばいい。環境問題からいってCO2の削減はもう絶対必要だと思うし、原油価格もいずれまた上昇に転じるでしょうから」
技術者としての強烈な自負が言わせる言葉なのだろう。あるいは平木の視線の先に、建機業界の巨人・米キャタピラーをとらえたという確信があるからなのか。